『お母さんに無駄遣いをさせたくない……』
2018.04.27
数年前の話です。
「ぼく、もう勉強したくないから、塾に行きたくない」
小学4年生の男の子が、ご家庭でそういう言葉をもらしたそうです。お母様は慌てて私に相談にいらっしゃいました。いつも真面目に授業を受け(といっても、小4の男の子なりのおふざけもあったのですが)、宿題も欠かさず提出してくれていたので、私も驚きました。シールを集めることをとても楽しみにしていましたし、漢字テストで連続100点記録を伸ばすことを目標に、本当によくがんばっていました。
お母様からのご要望もあり、私がお子様と一対一で面談をしました。そこで出てきた「本当の理由」は、「お母さんに無駄遣いをさせたくないから」という言葉だったのです。ある日、ご家庭のなかで、塾の費用についての会話があったそうです。詳しい内容まではうかがっていないのですが、「これだけの費用がかかっているんだから、成績を伸ばさなければ無駄になる」というような話だったようです。普段から、お小遣いやお年玉などをもらうときに「無駄遣いをしてはいけない」と聞かされていた彼は、自分が成績を伸ばさなければ「大きな無駄遣い」になってしまうと考えてしまったようです。
自分ではどうにもできないものに直面したとき、人は大きな心の痛みを感じるといいます。身近な存在の「死」や、卑近な例であれば「失恋」や……、自分がどう努力してもその事態を変えられないことに対し、辛く切なくなり、大きな悲しみを胸に抱くのだそうです。
お子様にとって、「お金の話」はまさに、「自分ではどうすることもできないもの」のひとつです。大学受験の際には、アルバイトをして学費を稼ぐということもできるでしょう。しかし、小学生のお子様にとっては不可能です。また、成績が右肩上がりで伸び続ければよいのですが、なかなかそうはいきません。成績というのは上下するものです。ですから、かけてもらったお金の分だけ常に成績を上げなければならない、とお子様が考えてしまうと、そこに大きなプレッシャーが生まれてしまいます。
お金のことや経済に関する感覚をどのようにお子様に理解させるかは、ご家庭ごとの方針があるはずですので一概には申し上げられませんが、塾や学校の費用(教育費)については、お子様の精神的な負担にならないようにお話しいただくことを、私はお勧めしています。特にこの点に関しては、ご両親の考え方に食い違いがあるのも、お子様を混乱させることにつながりますので、ご夫婦の間でもご相談いただく時間をおつくりいただくのもよいと思います。
先日の記事でもお伝えいたしましたが、次回の記事更新は、ゴールデンウィーク後の5月9日(水)となります。保護者の皆様も、お子様とご一緒にゴールデンウィークをお楽しみください。
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