『桜、満開!』
2018.03.28
東京の桜が「満開」を迎えようとしています。早稲田アカデミーでは、現在春期講習会が実施されていますので、「お花見」というわけにはまいりませんが、自宅から駅までの通勤路は大きな桜のある道を選んで歩いています。
先日の「基礎から学べる中学入試報告会」でもお話ししたのですが、中学入試では、身近な事柄に興味を持っているかを試す問題がよく出題されます。たとえば、今年の渋谷教育学園渋谷の社会の問題では、「いちごの月別市場価格」において12月が最も高くなっている理由を問う問題が出題されました。また生花の市場取扱量や生産地を考察させる問題では、「結婚式」や「お彼岸・お盆」といった年間行事と生花の関係について問う問題もありました。そこでは花の名前ではなく「母の日に贈られる花」「19世紀ヨーロッパで男性が12本の花束をプロポーズに使った花」「葬儀やお墓参りに使われる花」といった言葉から考えさせるという形式の設問でした。さて、そういった身近な事柄に、お子様が興味を持つためには、保護者の皆様の働きかけが必要になります。ちょうど、桜の時期ですので、今回は「桜」を題材にして、お子様との会話が進むような話題を。
桜を題材にした和歌はたくさんあるのですが、一番有名なのは百人一首にも収録されている紀友則の『ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ』という歌ではないでしょうか。穏やかでのどかな光が差している春の日なのに、なぜ落ち着いた気持ちもなく桜は散っていってしまうのだろうか、というような意味の歌です。小学生にこの歌の鑑賞をさせるのは少し難しいかもしれませんが、百人一首を知っているのであれば、こういう意味なんだよと教えてあげることで、興味を抱くかもしれません。
さて、この歌で詠まれている桜は、いまの日本人が良く知っているソメイヨシノではないことをご存知ですか。ご存知の方も多いと思いますが、ソメイヨシノは江戸時代に品種改良が行われてつくられた品種のひとつなのです。紀友則が詠んだ桜は花が美しいヤマザクラだといわれているようです。ヤマザクラは花と葉が一緒に出るため、今でいう「葉桜」のような状態で満開を迎えることになります。一方、花はそれほど大きくない種でも、葉が花より遅れて出る品種もあるそうです。この二種を掛け合わせて、美しい花だけが満開になるようにつくられた品種がソメイヨシノなんだそうです。また、ソメイヨシノは接木でしか繁殖できないため、全てのソメイヨシノは江戸時代の一本の木からつくられた同じ遺伝子を持っているそうです。そう考えると不思議な気分がしますよね。
さて、もう一つ桜の話題。お子様方に『桜ってどんな匂いだと思う?』と問いかけてみて下さい。皆様も、そう聞かれるとなんとなく桜の匂いを思い浮かべるのではないでしょうか。もしかしたら「桜餅」の匂いをイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。桜餅の匂いはもちろん、桜の花の匂いではなく、桜の葉の匂いです。実は桜の花にはほんど香りはないのです。桜の香りと呼ばれている商品の多くは、桜の花から連想されるイメージでつけられているそうです。
私はどちらかというと、満開の桜よりも散り始めたくらいの桜の方が好みです。「桜吹雪」とか「花筏」とか……そんな光景に心が惹かれるようです。
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