『記述力・表現力』
2018.07.18
先日の授業の中で、「猛暑」「酷暑」「厳暑」「炎暑」「激暑」とホワイトボードに書いて一番暑さを感じるのはどれかという問いかけを生徒にしてみました。どれも見ただけで汗が噴き出してきそうですが、今年は7月の初めからそんな文字を新聞やテレビでよく見かけます。皆様も体調管理には十分お気をつけください。我々講師も「夏」は体力勝負の時期ですので、なるべく規則正しい生活をしたり、きちんと休養をとったりと考えてはいるのですが、なかなかうまくいかないことが多く……。
さて、今回は「記述力・表現力」について書かせていただきます。中学入試では多くの学校で「記述式」の設問が出題されます。国語だけではなく、理科や社会でも、場合によっては算数でも出題されることがあります。「記述が苦手でいつも空欄にしてしまう」というご相談をよく受けるのですが、掘り下げていくとその要因はさまざまで、対処法も異なります。
一般的に国語の説明的文章や、理科・社会の記述問題の場合、必要となるのは論理的説明力です。入試で求められるのは、問われていることに対して、きちんと因果関係を把握し、必要な語句を選別し、わかりやすく簡潔にまとめることです。科目によって「必要語句の選別」のところの考え方が少し異なります。国語の説明的文章であれば、文意・文脈を把握して基本的には文中から重要語句を選ぶことになります。理科・社会であれば、今までに学んできた知識から必要なものを考え出す(思い出す)ことになるわけです。この解き方が理解できていれば、記述問題を空欄にしてしまうことはほとんどなくなるはずです。さらに文章としてうまくまとまっていなくても、必要語句がきちんと選べていれば、部分点がもらえることもあります。
実は、今回書かせていただきたい「表現力」は、上記したような、ある種テクニック的な「記述解法」についてではありません。最近の中学入試の問題傾向として、自分の意見や考えを書かせるような記述スタイルの設問が各科目で増えてきています。
このような「表現力」は一朝一夕に身につくものではありません。さまざまな場面でトレーニングをしていくことが必要になります。小学校で夏休みの宿題として出される「読書感想文」もトレーニングとしては効果的です。単にストーリーを要約して「面白かった」「かわいそうに思った」というような感想でまとめるのではなく、もう少し深く考えて書くことで「表現力」のトレーニングになるのです。そのためには、保護者の皆様の協力も必要です。と言っても、大変なことが必要なわけではありません。端的に言えば、「読書感想文」を書く前に、その本に関してお子様と会話をするだけでよいのです。
本を読んだ後、お子様方の頭の中にはさまざまなイメージや感想が残っています。ただ、それをそのまま原稿用紙に言葉として表現するのは難しいものです。頭の中にあるものがまだ整理されていないということや、またそれを表現するための語彙も不足していると思われるからです。お父様やお母様と会話することで、頭の中は整理されていくものです。その会話の中で、うまく表現できないような感情などは、少し使う言葉をアドバイスしてあげてください。お子様と読んだ本について会話をしていくきっかけとしては、「お母さんも読んでみようと思うんだけど」「どんな場面が印象に残っている」というように進めていただくのがよいと思います。あくまでお子様の感想を引き出すのが目的なので、誘導的に進めるのはよくないということも付け加えておきます。
初めに書かせていただいた暑さの表現について「一番暑く感じるのは」という問いかけに対して、生徒たちの答えで多かったのは「炎暑」でした。「猛暑・酷暑・厳暑・激暑」の「猛・酷・厳・激」という文字は「とても・ひどく」といった意味ですが、唯一「炎」だけは「火が燃えているような」という具体的イメージにつながる文字となります。そういった点から「炎暑」が一番暑いように感じるようです。こういった言葉や文字に対する感覚や考え方を身につけることも、「表現力・記述力」の向上につながっていくのです。
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