四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『価値観』

2018.06.27

すでに梅雨が明けたかのような、夏の日差しが続いています。早稲田アカデミーでは6月からクールビズが始まっておりますが、私も半袖ワイシャツで出勤し始めました。


最近いろいろなところで「協働力」という言葉を目にします。現在は「ひとりの天才が成果を出す社会から、能力の高い個が集まってチームとして成果を出す社会」になってきているといわれています。他者と協力していく力というのが「協働力」となるわけですが、その力についても「高い・低い」という評価がなされるようになってきました。実際、東京大学の推薦入試課題には「このグループディスカッションはみなさんの論理的思考力、発想力、コミュニケーション能力、チームで作業する能力などを審査するためのものであり……」と表記されています。小学生の段階で「協働力」を高めるというのはまだハードルが高いと、私は考えています。中学校・高校などでは、そのためのさまざまな取り組みが行われています。そういった観点から学校選びを進めるのも、これからは必要なことだと思います。


さて、小学生段階では「協働力」につながる「コミュニケーション能力(表現力)」と、その根底にある「他者を理解する」という点を伸ばしていく意識を持つことを、私はお勧めしています。「協働」するためには、「ひとりよがり」ではなく、他人の気持ちや考えを理解するところがスタートラインのはずです。そこが「協働」の土台となるのではないでしょうか。


他人の気持ちを理解するというのは、とても難しいことだと思います。ただ、人間は一人では生きていけないものですから、常に他者とのコミュニケーションを意識しなければなりません。


国語では、心情をとらえる問題がよく出題されます。登場人物が置かれている背景を理解し、気持ちが動く原因となる出来事を読み取り、そしてその結果生じた人物の行動や表情・会話から気持ちを推測する、といった手順で考える問題です。初めのうち(低学年のうち)は、表に出てきた「行動・表情・会話」だけから気持ちを読み取ろうとしてしまいがちです。「泣いている→悲しい」「笑っている→楽しい」といった感じでしょうか。その次に、結果として同じ行動でも、その原因となる事実によってさまざまな心情が生まれることがわかってきます。そして、人物が置かれている状況(背景)まで考えてつかむことができるようになれば、中学入試の解法としてはOKです。


「夕日を見て泣いている小学生の女の子」の気持ちを考えるときに、「夕日を見て悲しくなった」ではおかしいでしょう。原因は学校であったことかもしれませんし、家庭かもしれません。泣いているのだからつらいことがあったのだとはわかります。ただ、つらいことがあった瞬間に泣くのではなく、一人で夕日を見ているときにこぼれてきた涙であるということをとらえると、性格などを含めた背景を考える必要があるということはご理解いただけると思います。


さて、国語の問題で出題される「気持ちの理解・読み取り」はある程度一般的なものです。ところが、実際の社会や生活の中では、それぞれの「背景」はさまざまです。単に「置かれている状況」だけではなく、その人間の「考え方」や「価値観」を理解しなければ、本当の気持ちまではわからないはずです。自分の価値観の中だけで理解しようとすると、相手の本当の気持はわからないでしょう。


実は、お子様との接し方の基本がここにあるのです。精神的な成長過程にあるお子様にとって、大人の価値観が当てはまらない場合が多くあります。よくいわれることですが、お子様は成長に伴って、意識する対象が変わっていくものです。初めは親や先生といった「上」への意識が強いのですが、だんだんと同学年の友人やライバルという「横」を意識するようになり、最後に自分の理想や夢をかなえるためにという「下(内・自分)」を意識するそうです。もちろん、決まった時期にその年代のお子様の気持ちが一斉に切り替わるということではありません。小3から小4くらいの時期では、まだ「上」への意識が強く、精神的に成長してきたお子様であっても「横」へ向けた意識が芽生え始めたくらいでしょう。


たとえば、「勉強」に対するモチベーションを上げることを考えても、この点を理解してお子様と接することが必要です。「自分のためなんだからがんばりなさい」という言葉は、勉強することが将来の自分のためになる、ということを教えるには必要な言葉です。ただ意識が「上」や「横」にしか向いていないお子様にとって、本質的に理解できるものではなく、その言葉を聞いたからといって「よしがんばろう!」という気持ちにはならないのが普通です。それよりも、勉強すること・テストを受けること、そのものを親や先生に褒められることの方が、勉強に対するモチベーションが上がるのです。


お子様の、子どもなりの価値観を理解したうえで、気持ちを考えて接していただければと思います。

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