四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『ユズリハ』

2018.12.07

クリスマスツリーやイルミネーションで、街中が華やかな季節になりました。と同時に、お正月用品も店頭に並び始めています。


私の実家の庭に「ユズリハ」の大きな木がありました。11月の終わりになると、毎年「しめ飾り」を作っている業者さんが「ユズリハ」の葉を採りに来ていました。「しめ飾り」や「鏡餅」に縁起物として「ユズリハ」の葉が使われているということを知ったのは、たしか小学5年生くらいのときだったと思います。当時は「ユズリハ」という木の名前は知っていたのですが、なぜその葉が正月飾りに使われているのかは知らず、母に尋ねてみたところ、「自分で調べてごらん」と言われたので、図書館に行きました。


話が横道にそれますが、今だったらインターネットを使えば、その程度の情報はすぐに手に入るでしょう。試しに「ユズリハ」と検索したところ、すぐに見たい情報に到達することができました。ただ、当時はどの本を見ればよいのかわからずに、いろいろと調べました。子ども用の植物図鑑ではわからずに、大人用の事典や図鑑を見て、それでも書かれていることが完全には理解できず……。さまざまな本を調べた末、やっと理解できた記憶があります。時間はかかってしまったものの、そういった経験が次につながったような気もしています。


一方で、これだけ情報や知識の取得が容易な社会になると、「知識をたくさん持っている(知っている)」ということの価値は低くなるのは当たり前だと思います。逆に、あふれている情報のなかから自分にとって本当に必要なものを識別し、それをさらに活用して自分の思考をつくっていく、そんな力が求められる社会になっているのでしょう。「高大接続改革」の中で、新たに実施される「大学入学共通テスト」で問われる資質や能力において、「知識・技能」よりも「思考力・判断力・表現力」に重きが置かれているのも、そんな背景によるものだと思います。


話を「ユズリハ」に戻します。図書館で調べてみてわかったことは、「ユズリハ」という名前は「葉を譲る」という意味で、「新芽が出るとそれに譲るように古い葉が落ちる」という性質が語源ということでした。そして、その性質を「親が子どもに後を譲る」ということになぞらえて「縁起物・おめでたい木」とされるようになったと理解はしたのですが、その時点では納得はできていませんでした。「親が子どもに後を譲る」ということが、なぜ「おめでたい」ことなのかが、小学生の私にとっては理解できなかったのです。それよりも「子どもに後を譲って、散っていく親の姿」というイメージは、子ども心に言葉にはできない「もの悲しさ」のような感情を抱かせ、「別にめでたい木じゃないよなぁ」という漠然とした思いが残ったままでした。今になれば、「親が子どもに後を譲ることで、家が代々と繋がり、繁栄していく」という意味を理解できるのですが、「家」「家系」という概念は、私の世代であったとしても実感としてつかみにくいものです。


ただ、小学生の間に、こういった身近なことからいろいろな考え方に触れるのは、とても大切だと思います。「古いもの」や「古い考え方」がすべて良いとは思いませんが(どちらかというと「新しいもの好き」な方だと思います……)、昔から連綿と伝わっている「考え方」を理解し、その上に立って未来を創っていく、そんな子どもたちに育ってもらいたいと考えています。

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