『時間単位の学習密度 ~受験学年「秋」以降の学習指針~』
2020.09.09
新型コロナウイルスの影響による変則的な日程の夏期講習会が終わり、9月新学期の授業がスタートいたしました。まだまだ残暑も厳しい時期ですが、「勉強の秋」へ向けて早稲田アカデミー各校舎では、生徒たちのさらなるやる気を引き出すために、新学期オリエンテーションを実施しています。
小6受験学年の生徒たちにとっては、来年の入試まで残り5カ月となりました。それぞれの志望校へ向けた学習が加速していく時期となります。入試が行われるのは「来年」のことなので、まだ受験生としての実感がわいていない小学6年生もいます。毎年、秋の小6オリエンテーションでは「みんなはまだ半袖のTシャツを着ているけれど、もうすぐ涼しくなって長袖になるよね。そして、次に君たちが半袖を着るときには、もう中学生になっているんだよ。そのときにどこの中学校に通っているか……」という話をします。当たり前のことではありますが、具体的なイメージが思い浮かぶからか、生徒たちは少しはっとしたような顔になります。
先日の日曜日(9月6日)には、全校舎で「NN」の二学期講座が開講になりました。今年度、私は神奈川の校舎での勤務となったこともあり、数年ぶりに「NN慶應義塾普通部クラス」を担当しております。一学期中はZoomでの授業だったのですが、二学期からは対面授業となっており(一部Zoomで参加している生徒もいます)、志望校合格へ向けて緊張感ある授業を展開しています。
9月6日から、来年の2月1日までは「残り148日」となっています。単に「148日」という数だけを受験生に伝えると、「まだそんなにあるのか……」という顔をする生徒がほとんどです。そこで「学校が始まると夏休みのような「1日10時間の受験勉強」はできないよね。もし1日3時間の勉強を残りの期間で行うと……444時間!」という話をすると、顔色が変わる生徒が出てきます。さらに「一科目に使える時間は111時間ということになる。入試過去問の演習で考えると、解く時間と直しの時間で最低でも90分はかかるから、74校分ということになるね。もちろん、ここからの家庭学習は入試過去問だけをやっていれば良いわけではありません……」という話に続けていきます。入試までの具体的な数字を伝えることで、受験生としての意識をさらに高めていくことができます。もちろん、小学校の授業がない土日や冬休みには、もっと学習時間をとることはできますので、そういう意味では444時間は正確な数字ではないのですが……。ただ、受験生に残された日数・時間は当たり前ですが、「同じ」です。
残された「148日」で志望校への合格を勝ち取るためには、同じ学校を目指しているライバルに差をつけるような学習をしなければなりません。昔の大学受験では「四当五落」という言葉が流行ったことがあります。睡眠時間を削って受験勉強に勤しむということを表した言葉で、四時間睡眠ならば合格、五時間以上寝てしまうと不合格になる、というような意味で使われていました。もういまでは死語になっている言葉です。睡眠時間を削っての学習は、定着度が下がってしまうので、効果的ではないとういうことも立証されているようです。小学生にとっては、高校生以上に睡眠が大切なものであることは、ここで言うまでもないでしょう。「ライバルよりも勉強時間を増やす」ということは、受験生の学習としては「現実的」なものではないのです。
私が受験生に話をしているポイントを一言で言うと、「学習効率を高める」ということに尽きます。同じ時間で学習できる「量」を増やす、というイメージです。よく使うのは「時間単位の学習密度を高める」という言葉です。受験までの日数・学習できる時間数が同じでも、その時間の中で「こなせる学習量」に差をつけることができれば、合格に近づくことになるはずです。先日の「NN慶應義塾普通部クラス」の授業でも、「3時間勉強した生徒と5時間勉強した生徒では、どちらが合格に近づくか」という問いを生徒に投げてみました。「5時間」という答えが返ってくるのですが、「同じ学習内容だったら、3時間の生徒の方がいいはず」「集中して短時間で学習を進めていくことが合格に近づく道」というようなことを説明しました。
小6の秋になって「時間単位の学習効率を高める」ことを意識し始めても、なかなかうまくいかないものです。小6の夏期講習会や夏期合宿(夏期集中特訓)で「受験生としての意識」を高めることができれば、秋からの学習に向かう意識は変わってきて、学習姿勢もよくなってはきますが、より上のレベルで「効率のよい学習」を行うためには、非受験学年において「集中して学習に取り組む経験」を積んでおくことが必要になります。 小5までの非受験学年であれば、与えられている課題も(受験学年の秋に課される内容と比べれば)そこまでは多くありません。ただ、かなりの時間がかかっている(かけている)お子様も多いのではないでしょうか。場合によっては、机の前に「ボーっと」座っているだけで、実際には手も頭も動いていない、そんなケースもあるかもしれません。非受験学年の保護者の皆様には、そういったお子様の状態をしっかりと見ていただいて、なるべく「効率の良い」学習スタイルに切り替えられるようにサポートをお願いいたします。まずは「学習時間の長さ」よりも、「学習効率」を意識していただければと考えています。
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