『読む力を高めるために ~書くことの重要性~』
2020.09.11
夏期講習会の国語のテキストに「記述問題」が多くあったかと思います。どの学年、どのクラスでも、夏の国語の授業の中では「記述問題」を扱う割合が高くなっています。先日の記事でご紹介した「学力の三要素」でも、「思考力・判断力」と並んで「表現力」が重視されています。自分の考えたことを「わかりやすく表現する力」というのは、「協働」して学ぶためにも、働くためにも必ず必要となるのは間違いのないところでしょう。
一方で、私は「読む力」を高めるためにも「書く力」が必要だと考えています。セミナーなどでは「自分で書くことができなければ、他人の書いた文章をしっかりと理解し、読むことができない」というお話をさせていただくことがあります。
自分で書ける文章のレベルが低いと、やはりレベルの高い文章をしっかりと読んで理解することはできないものです。概ね自分が書ける文章の一段階上のレベルの文章までが理解できるのではないでしょうか。たとえば、小5・小6レベルの文章が書けるのであれば、中学生レベルの文章まで読みこなせる……というイメージです。そして、一段高いレベルの文章を読み込んでいくことによって、そのレベルの文章が書けるようになり、次にはもう一段階高いレベルの文章が読めるようになるわけです。
当たり前のことですが、「書く」ことと「読む」ことの間には緊密な相関関係があります。一つひとつの言葉の使い方や語彙や語句知識もそうですが、ひとつの文の中でのつながり(主語述語のつながりや係り受けetc.)や文脈全体の構成……文章を書くためにはいろいろな形の思考が働いています。それがある一定のレベルで、できるようになることによって、他の人間が同じレベルで書いた文章が読めるようになるのです。そう考えると「文章を書く」というトレーニングは(国語という枠組みを超えた)とても高いレベルの学習だとご理解いただけると思います。
さて、では小3・小4の時点ではどのように「文章を書くトレーニング」をしていけばよいのでしょうか。実はこの時点では、「書く」ことに対する段階は、お子様によって大きな差があります。テストなどの成績がよいお子様が、文章を書くのがうまいというわけでは決してありません。小4までのテストは「覚える」ことによってある程度の得点を取ることができます。そのため自分なりの覚える方法を身に付けていれば好成績を残すことができるのです。しかし「書く」ということは、前述しましたように、高いレベルの思考過程を身に付けることですので、なかなか結果にはつながりませんし、時間もかかるものです。ですから(どの段階のお子様にも言えることですが)、「書く」トレーニングは継続する必要があるのです。「日記」でもかまいませんし「読書ノート」でもかまいませんが、3日坊主にならないように、無理なく継続できるようにすることが大切です。もちろん毎日である必要はありませんし、長い文章を書く必要もありません。お子様自身が負担に感じてしまえば、逆効果にもなりかねませんので、その点はご留意ください。
ひとつのアイディアをご紹介します。『なんでも感想ノート』というのはいかがでしょうか。もちろん『読書感想文』や『読書感想ノート』でもよいのですが、その場合はまず読書をしなければいけません。また『日記』だと、まずその日にあったことを思い出して、書く題材を決めなければなりませんから、その時点で面倒に感じてしまうお子様も多いと思います。毎日の生活の中では、なかなか書くことがなくなり、同じような日記になってしまうことも多いでしょう。その題材選びを楽にするのが、『なんでも感想ノート』です。なんでもかまわないので、それについての感想を書けばよいのです。場合によってはお父様、お母様が題材を選定してあげてもかまいません。
見たテレビ番組の感想、晩ご飯のおかずについての感想、習い事の感想……実はそう考えると書く事柄は毎日たくさんあるものです。そして、このノートがうまく活用されていけば、お子様は毎日の生活の中で「そうだ!これをノートに書こう!」と思うようになってきます。注意力や好奇心にもつながり、文章を書く力だけではなく、そういった部分にも好影響がでてくるはずです。参考になさってみてください。
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