『気持ちをあらわす言葉 ~心情表現を理解する~』
2020.11.11
先日実施された「全国統一小学生テスト」でも、各学年の国語の問題で「心情理解」に関する問題が出題されました。出題文中の登場人物の心情を考えさせる問題もありましたし、学年によっては「心情表現」をそのまま書かせるような問題も出題されました。
小学3年生のカリキュラムでは、ちょうどこの時期に物語文の中で「気持ちを理解する」「気持ちの変化をつかむ」という学習をしています。まずは、自分が感じたことのある気持ちを正しく言葉にするための表現を学ぶところからです。小学4年生以上になると、自分では感じたことのない心情も理解できるようになることが必要にはなってくるのですが。
数年前、開成中学で「やるせない」の意味を答えさせる問題が出題されたことがあります。小学生が普段の生活で使う語彙ではないでしょう。「なんか、やるせないなぁ」なんて言っている小学生がいたら、それこそ「やるせない」気分になってしまいます。こういった気持ちを表すことば(心情表現)は中学受験の国語においてはとても大切です。が、教えるのはなかなか難しいものです。
すこし複雑な心情表現として、「心細い、ほほえましい、切ない」という言葉を例にとってみます。小学3年生を対象とした場合、この中で一番教えやすい言葉と教えにくい言葉はどれだと思いますか。お子様が実際に感じたことがある、という視点で考えてみるとわかりやすいと思います。
正解は(一番教えやすいのは)、「心細い」です。「○○さんが、学校から家に帰ったら誰もいなかった。お母さんはどこに行ったかわからない。だんだん外は暗くなってくる。家の中は電気もついていなく薄暗くなってきた。○○さんは、ぽろぽろと涙をこぼした。さて、このときの○○さんの気持ちを表す言葉を考えてみましょう」こんな風に問いかけます。生徒たちからは、「悲しい」「さびしい」などの答えが返ってくることが多くあります。「涙」という言葉から連想される心情表現です。「悲しいはちょっと違うかなぁ。さびしいは近いけれど……」そんな風に声をかけながら、「不安」という言葉を引き出します。そして「不安でさびしいときに使う言葉」として、「心細い」を教えるわけです。
自分も感じたことがある気持ちですから、具体的なイメージを持ちやすいわけです。実際に、そんな気持ちを感じたことがあるかを聞くこともあります。よく出てくるのは「迷子」になったときなどですが、小学生の生徒であれば、多かれ少なかれ「心細い」経験をしたことがあるので、「すっと」入っていきます。
一方で、一番教えにくいのは、「ほほえましい」です。小学3年生くらいでは、自分で誰かを「ほほえましい」と感じた経験は普通ないでしょう。まだまだ、大人から「ほほえましい」と思われる年代なのですから。「ほほえましい」という表現は、自分よりも年下の対象を見て感じる気持ちです。ある意味、「大人の感情」ということになります。小学3年生であれば、赤ちゃんを見てもせいぜい「かわいい」と感じるのが普通です。そのため「ほほえましい」という「大人の感情」を理解させるのは難しいのです。
しかし、中学受験の国語の教材には「一所懸命に○○をやっているわが子を見てほほえましく感じている」といったような記述が模範解答に書いてあることがあります。普段生活をしている中で、小学生が持つ感情ではありませんが、「こういう場面ではこういう感情を抱くものだ」と教えることも大切になってくるわけです。自分では感じることがない心情や、小学生が日常生活の中で使わない言葉であったとしても、理解するだけではなく、表現できるように自分の「語彙」として記憶しておくことも中学受験の記述問題を解くためには必要なのです。
「切ない」というのも、そういう意味では難しい感情です。小学生で「切なさ」を感じている子どもがいたら、それはそれでやはり少し違和感があります。
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