『問題を読む力　～算数的読解力～』

2020.11.13

１１月３日に実施された「全国統一小学生テスト」の算数の後半で出題された文章題では、どの学年もかなりの「読解力」が求められました。特に小学１年生の最後の問題や、小学３年生の大問［６］などは、ルールや条件をしっかり読み取れているかが大きなポイントになったと思います。今回は「問題を読み取る力」について書かせていただきます。

「昼と夜の長さが同じになる秋分の日ですが、今年は９月２２日でした。その３カ月後の１２月２１日には冬至となり、昼の長さが夜よりも２時間短くなります。冬至の日の昼の長さは何時間でしょう」という算数の問題を考えてみます。早稲田アカデミーのカリキュラムでは小学３年生で出てくる問題です。

余談ですが、理科的に考えると上記の問題には少しおかしなところがあります。春分の日、秋分の日は、一般的には「昼と夜の長さが同じ日」とされていますが、厳密にいえば違うそうです。「日の出」や「日の入り」の定義なども考えると、７～８分ほどの違いがあるのです。今回の問題は、理科ではなく算数の問題となりますので、文中に与えられている条件が正しいと仮定をして、考えるようになさってください。

では問題に戻りましょう。気付かれた方も多いと思いますが、これは単純な和差算の問題です。答えを出すための式は……、

（２４－２）÷２＝１１　　答　１１時間

となります。

「ＡくんとＢくんが合計で２４個のアメを持っています。Ａくんの方が２個多く持っているとすると、Ｂくんは何個持っているでしょう」という問題と考え方はまったく同じです。しかし、アメの問題はできても、冬至の問題ができない生徒も多くいます。それは文章題を読んだときに、書かれている条件をしっかりと理解し、不必要な情報は削り、必要な情報は補って、最終的に問題の本質と解法に行き着くという経験が不足しているためです。

算数の授業では新しい単元を学習するときに、解法（解き方）をまず初めに教えます。「和差算」であれば「線分図」を書いて解く、といった方法になります。そこから、いろいろな形で出題される文章題に挑戦していくことになるわけです。

冬至の問題を詳しく分析して、和差算の解法は理解していても、解けなかった生徒の「頭の中」を少し考えてみたいと思います。

設問文には、日付が書いてあったり「３カ月後」という条件が書いてあったりしますが、すべて不要な情報です。これらの不要な情報を削り、シンプルな形にすると「昼の長さが夜の長さよりも２時間短い日の昼の時間は何時間でしょう」という問題になるわけです。実はここまできても、まだ正解にたどりつけないケースがあります。この点については、アメの問題と比較をしていただくとわかります。アメの問題では「２４個」という合計数（和）が書かれていますし、「２個」という差もありますので、すぐに「和差算」だと気が付くはずです。一方で、冬至の問題では「一日は２４時間」という前提が書かれていませんから、そこを頭の中で補うことが必要なわけです。大人からすれば至極当たり前のことでも、小学生にとっては、気が付かないポイントだったりします。

よく「算数の文章題を解くためにも読解力が必要」と言われます。読解力といっても、国語で学習する「読解力」とはまた違うものなのです。「何を問われているか」をしっかりと読みとり、文章中に書かれている条件を整理分析し、解法にいたる道筋（「解答にいたる」ではありません）をきちんと考える……、それが「算数に必要な読解力」だとご理解ください。

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