『「やりたいこと」と「やるべきこと」』
2020.11.18
たとえ「やりたいこと」があったとしても、「やるべきこと」があればそれを先に終わらせる。こういった物事の「優先順位」をきちんとつけて、それを守ろうとするのは大人の感覚でしょう。なぜそうするのかといえば、そうしなければどうなるのかが大人にはわかっているからなのだと思います。後で苦労するよりは、先にやった方が心情的に楽になる、という判断もあるかもしれません。
一方で、子どもの場合は、宿題があったとしても友だちが誘いに来れば遊びに出かけますし、見たいテレビ番組が始まれば宿題の手が止まるなど、やりたいことを優先してしまうのが普通です。
友達と遊びに行こうとしている子どもに、「宿題を終えてからにしなさい」と声をかけ、机に座らせたらどうなるでしょうか。たぶん多くの皆様が想像される通り、頭は動かず手も動かず……という状態になってしまうのではないでしょうか。小学生の場合、「やりたいこと」と「やるべきこと」をきちんと頭の中で整理し、「やりたいこと」を頭の片隅に追いやって、「やるべきこと」に集中するというのはなかなか難しいことなのです。
読書がとても好きな生徒がいました。本を読んでいるときに、家庭学習の時間になったのでお母様が声をかけたところ、「もうちょっと、もうちょっとだけ読ませて……」ということが何度かあったそうで、相談を受けました。学習計画表に沿ってしっかりと学習を進めさせたい場合には、「学習のスタート時間を守らせる」ということはとても大切です。そういう点で考えると、このケースは「ダメ!すぐに始めなさい!」というのがお母様の正しい対応となります。
ただ、その後の学習効果を優先する場合は、少々大目に見てもよいケースだとも考えられます。「いまどこまで読んでいるの?きりのよいところになったら勉強するのよ」という答えがあってもよいわけです。本の続きが気になっていては、宿題に集中できないものです。もちろん、本当に読書に引き込まれているというのが前提です。場合によっては「勉強にとりかかりたくない」から、「もうちょっと」と言っている場合もあるはずなので(実際にはその場合が多いかもしれません)、そのときには「きちんと計画表に書いてあるでしょ!」と厳しめに声をかけていただければよいと思います。
小5以上からは、「やりたいこと」を優先させるよりも「やらなければならないこと」を先に片づけるという方向に少しずつ向かわせていくのがよいと思います。ある程度の「計画性」が身に付いてくれば、「いまやらなければ後で困る」という意識も芽生え始めるはずです。そのタイミングで「自制」することを自覚するようになれば、(もしくはそういう意識を持たせるようにすることで)一段成長することになりますし、私はそこからが本格的な「中学受験へ向けた道のり」のスタートだとも考えています。
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