『手紙 ~夏のコミュニケーション「番外編」~』
2021.07.28
オリンピックが始まっています。コロナ禍での開催に関しては賛否両論があります。この点に関して、専門家でもない私がコメントをするのは避けたいと思いますが、「選手や関係者、さらには国民全体の健康と安全・安心」を第一に考えてもらいながら、最終的に「開催されてよかった」と多くの人が思われるような大会になってほしいと個人的には思っております。
競技はもちろんですが、私が気になっていてよく見ているのは、競技を終えた後の選手のインタビューです。さまざまな困難を乗り越えて挑んだ「大きな目標」を終えた後の言葉には、それだけの経験を積んできた人にしか言えない言葉があるように思っています。「金メダル候補」と言われ、大きなプレッシャーの中で臨んだ大会で、最高の結果につながったときの言葉、もしくは実力を発揮できなかったときの言葉、その中には大きく心を動かされるものがあります。今回のオリンピック・パラリンピックの大会モットーは「United by Emotion」という言葉だそうです。「感動で、私たちは一つになる」という意味合いだと思うのですが、私にとって大きな感動となるもののひとつが、競技を終えたあとの選手のインタビューだったりします。
夏休みには「暑中見舞い」や「残暑見舞い」を書くお子様がいらっしゃると思います。私のところにも卒塾生から届くことがあります。「〇〇部でがんばっています」とか「去年の夏期講習会が懐かしいです」とか書いてくれているのを見るととてもうれしくなります。お正月の「年賀状」も同じですが。
昨年・今年は新型コロナウイルスの影響で、帰省を自粛されているご家庭も多いことでしょう。おじい様やおばあ様に「暑中見舞い」をご用意される方もいらっしゃると思いますし、「オンライン帰省」をご予定されている方もいらっしゃるでしょう。ただ、今年は少し趣向を変えて、お子様に「手紙」を書かせてみるのはいかがでしょうか。
最近、「手紙」はあまり見かけなくなりました。「暑中見舞い」や「年賀状」のような葉書、「バースデーカード」や「クリスマスカード」のようなカード、などは文房具店でも多く見かけるのですが、「便箋」「封筒」というグッズは隅の方に追いやられているイメージがあります。パソコンや携帯電話(スマホ)のメールやチャットという便利なコミュニケーションツールが広く利用されているのが大きな要因だと思います。それはそれでよいのですが、たまには「手紙」を書く(お子様に書かせてみる)というのもよいのではないかと思うのです。
「手紙」を書くときには、メールやチャットと比べて、より深く考える必要があります。「相手の状態を考えること」「相手に伝えたい内容を考えること」「全体の構成」などなど。それらを考えることは、表現力やコミュニケーションの本質的な力を育てることになると、私は考えています。
まずは「下書き」をさせてみるのがよいでしょう。少し時間をとって、書きたい内容を考えさせて、メモを作らせてみるのもよいかもしれません。初めはなるべく「誘導」せずに、お子様が考えたことを尊重しながら、少しずつアドバイスをしていくのがよいと思います。
・おじい様、おばあ様の体調を心配する ・去年、けがをした足の具合をたずねる ・新型コロナウイルスのワクチンは痛かったか、熱が出なかったかをたずねる ・夏休みの塾のことを伝える ・一学期の学校の成績を伝える ・以前に帰省したときの楽しかった思い出を語る ・新型コロナウイルスがおさまったら、来年のお正月か夏休みに行きたいと書く
そんな箇条書きのメモが作れたら、それを文章にしていくことになります。すぐに「清書」というところまでではなく、何度か書き直すことも必要になるでしょう。
「手紙」は「相手のことを考える」ことがとても必要になるコミュニケーションツールだと考えています。「自分の言いたいことだけ」を書くのではなく、「相手が聞きたいこと」「相手が読んで喜んでくれること」を考えることが大切になるはずです。そして「手紙を書くために相手のことを考えている過程」の中で、その相手に対する理解が進み、その相手をより大切にする気持ちが生まれてくるものだと、私は考えています。
この夏、保護者の皆様も「お子様への手紙」を書いてみるのはいかがでしょうか。お子様はきっと宝物にしてくれると思います。
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