『計算の工夫』
2021.08.04
計算テストを解いている生徒の様子をよく見ています。答えが合っているかどうかだけではなく、どのように考えて、どのように手を動かして、どれくらいのスピードで解答できているか、そんなところをチェックしています。
「36÷12-7÷12+19÷12=」
さて、この問題ですが、お子様はどのように解き始めるでしょうか。 いきなり「36÷12=3」というところから書き始める生徒もいるはずです。そして「7÷12」と出てきたときに「あれ!?」と手が止まる……。無理やり「7÷12」の筆算を書き始める生徒もいます。もちろん割り切れないので、分数にして無理やり解き切れればまだよいのですが、そのまま「飛ばして」しまう生徒もいます。「÷12」がいくつかあることに気が付いて、「(36-7+19)÷12=4」と考えるのが正しい問題です。
「計算問題でもあわてずに、なるべく全体を見て、どういう解き方をするのが一番効率的かを考えなさい」という話をよくしています。上記のような割り算では割り切れないので、途中で手が止まって考え直すことになるのですが、かけ算などでは「力技」で答えを出そうとする生徒がいます。
「33.74×73+24.28×73-48.02×73=」というような問題で、 「33.74×73=2463.02」 「24.28×73=1772.44」 「48.02×73=3505.46」
と筆算でがんばって答えを出し、「2463.02+1772.44-3505.46=730」と答えを出すわけです。ここまでを「計算ミス」なく処理をしていくのは、ある意味「計算力」があるといってもよいかもしれませんが、中学受験算数で求められる「計算力」とは違います。ただ、正解が出てマルをもらうことはできるので、「これでよい」と思ってしまうこともあるのです。
小5になると「円」の問題で円周率が出てきます。3.14の計算を何度もしなければならない問題が多くの出てくるのですが、ここでは「3.14の計算は最後に」という指導をどこの塾でもしているはずです。それも計算の工夫の一つです。
問題にとりかかる前にまずは「解き方の流れ」「解答までの道筋」を考える、というのは計算だけに限らず、算数の問題すべてに当てはまる考え方です。実際の入試問題では、パッと見ただけで解き方がイメージできる問題は限られています。難関中入試で合否を決めるような応用的な問題では、問題文を見ただけでは正解までの道筋が思いつかないものが多いはずです。そういう問題の場合は、まず問題文を整理することが必要です。図に表してみたり、必要な部分の数字を抜き出しみたりすることで、自分が考えやすい形にするわけです(難しい問題の場合はここが一番大切な手順・部分となります)。そして、どのような処理をすれば解答までたどり着くのかをイメージします。ここで解答までの道筋が見えれば、その問題は「できた」も同然です。逆に解答までの道筋が見えない場合は、切り口を変えて考えてみるか、いったん飛ばして後で解き直すかという判断をする必要があるわけです。この流れがスムーズにできるようにトレーニングをしていくのも、受験までの算数学習の非常に大切な要素なのです。
できれば、低学年のうちから、問題を見てすぐに計算を始めるのではなく、どうすれば一番効率よく解答までたどり着けるのかを考えるという「一呼吸」を意識できるように、ご家庭でもご指導いただくのがよいでしょう。
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