四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『「難しい」と思ったときに、もう一歩踏み出す』

2025.04.09

以前実施したセミナーで、「小学生が問題を考える過程」を「迷路の中を手探りで進んでいく状態」に例えてお話しさせていただいたことがあります。分岐点に立って、いくつかに分かれた道のなかからゴールにたどり着く道をあれこれと考えて進んでいるようなイメージです。大人から見れば、多くの場合、ゴールまでの最短距離(問題の解き方・考え方)がすぐにわかります。迷路を上から俯瞰していて、全体像が見えているような感覚といえばおわかりいただけるでしょうか。そうした大人の立場から見ると、迷っているお子様をもどかしく感じられることもあるでしょう。


もどかしくなってくると、ときには「次は右!その次は左へ行きなさい!」と指示を出したくなることもあるのではないでしょうか。ところが、指示を受ける状態が続いてしまうと、お子様は「指示を受けなければ動けない」タイプになってしまうことがあります。「迷路の入り口」に立った瞬間、つまり「問題が難しいと感じた瞬間」に立ち止まってしまうのです。そして、誰かに指示してもらう(教えてもらう)ことで、その問題を「解決」しようという考えに進んでしまいます。誰も頼れない(教えてくれる人がいない)場面では、安易に解答・解説を見て、「わかったつもり」になるということにもなりかねません。しかし、このスタイルの学習では、大きな向上は見込めません。


「迷路のなかで迷っている」ときは、「いろいろな方法を考えて試す」という試行錯誤を繰り返している状態なのだと思います。そして、そういう瞬間にお子様は成長しています。「さっきはこの道を選んで失敗だったから、今度はこの道を選ぼう」という経験の積み重ねが、成長につながり、学力向上につながっていくのです。「失敗は成功の母」という言葉がありますが、これは「真剣に取り組んだ結果の失敗は心のなかに深く残るので、次からは同じ失敗はしないようになる」という意味の言葉だと私はとらえています。2012年にノーベル賞を受賞された山中伸弥教授がお話しされていたことを思い出します。「若い研究者には、失敗を恐れずチャレンジしてほしい」「9回失敗しないと1回の成功はやってこない」というお言葉でした。


さて、では「迷路の入り口で立ち止まらずに、自分から一歩踏み出す」ためにはどうすればよいのでしょうか。小学生にとっては、難しい問題に直面したときに「自分から一歩を踏み出す」という経験をする機会は、あまりないものです。小学校ではそこまで難しい問題にあたることはあまりないでしょう。塾の宿題でも「できる問題」はスラスラと進んでも、ちょっと難しくなってしまうと、前述したように「立ち止まって」しまうことが多いはずです。そんな小学生にとって一番必要なのは、「誰の助けも借りられない」状況で、真剣に問題に立ち向かうという瞬間です。


小学生が一番真剣に問題に取り組むのは「テスト」を受けているときです。私の感覚でいえば、授業中に解いているときは70パーセント程度、家庭学習では50パーセント程度、そしてテストのときは90~100パーセントの真剣さと集中度合いで問題に向き合っている印象です。そして、テストを受けた経験が増えてくればくるほど、「真剣に考えた経験」を積むことになり、家庭学習の真剣さや集中度合いも上がってくると感じています。


テストを受けているときは、どんな難しい問題でも「もう無理だと諦める」か「難しそうだけど考えてみよう、と自分から一歩踏み出す」かしか方法はありません。小学生にとって、やはりテストでは「よい点」を取りたいものですから、「一歩踏み出す」という選択をする場合が多いはずです。


早稲田アカデミーの「カリキュラムテスト」の大きな目的の一つはここにあるのだとお考えください。「カリキュラムテストが大切なのはわかるんですけれど、まだうちの子は宿題だけで手いっぱいで……」というご相談をいただくことがあります。そんなとき私は「宿題を短時間で効率的に進めるためにも、テストで真剣に問題に取り組む経験が必要なのです」とお話ししています。「宿題がうまく進むようになってからテストを受ける」ではなく、「家庭学習の学習効率を高めるために、まずカリキュラムテストをがんばって受ける」というようにお考えください。そのためにも、テストの前には、お子様が真剣にテストに取り組めるようにお話をしていただければと思います。

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