『ゴールからの逆算』
2018.02.16
中学入試へ向けたカリキュラムを教えていく中で、強く意識しているのは「ゴールから逆算」した指導を行うということです。勉強・学習という点における「ゴール」は大学での「学び」であり、受験を考えれば大学入試が「ゴール」ということになるかもしれません。もちろん、社会に出てからどのように活躍していくのかということも、ひとつの「ゴール」ととらえることもできるでしょう。
ただ、そこまでを視野に入れて毎回授業を行っているということではありません。中学入試カリキュラムで考えた場合、「ゴール」となるのは入試問題だと私は考えています。小学校6年生の1月・2月に挑戦していくことになる入試。そこでどのような問題が出題されるのか、合格点を取るためにはどのような考え方が求められているのか……、そこから逆算をして授業や指導を行っていかなければならないと考えているわけです。逆にその視点を持っていなければ、学習すべき方向性がずれてしまうこともあり得ます。
国語の漢字を例に少し書かせていただきます。
「サンサク(散策)に出る」「あるバン(晩)」「朝日にハンシャ(反射)する」「色をオびる(帯)」……今年のある中学校で出題された漢字の問題です。決して難しい漢字ではありませんが、実は男子の最難関校の一つである麻布中学校の問題です。また、今年の開成中では漢字単独の出題はありませんでしたが、昨年は「緊張カタ(過多)」「セイセキ(成績)が悪い」「ザッカ(雑貨)屋」「イトナむ(営む)」「キョクチ(局地)的」という出題がされていました。こちらも難しい漢字が出題されているわけではありません。ただ小学生の語彙のとしては、普通は存在しない言葉がいくつか含まれていることもおわかりいただけると思います。実は、中学入試における漢字の問題は、「漢字」そのものを知っているかどうかを試すものではなく、「語彙力」が試されているのです。当然、基本となる「漢字」そのものを知らなければ話になりませんが、開成にしても麻布にしてもそこで出題されている一つひとつの「漢字」が書けない受験生はほとんどいないはずです。
中学受験における漢字の出題の「ゴール」がそこにあるとするならば、そこに向けた学習の仕方も変わってくるはずです。漢字の学習というと、新しく出てきた漢字をマス目のノートに丁寧に複数回書くようなイメージを持たれる方が多いと思います。低学年のうちには、そういったスタイルの学習が必要になる場合も確かにありますが、それだけで終わらせてしまうと、「字は知っているけれど、漢字の問題は解けない」ということになる危険性もはらんでいるのです。単に「字を覚える」という学習だけではなく、「どういう意味の字なのか」「どんな熟語として使われるのか」という点を意識した学習を早い段階から行うことが必要です。中学入試学習の土台をつくる学年である、小学校3年生から4年生の間にできれば基礎的な学習スタイルを身につけておきたいところです。
新しく通塾を始められた方の中には、授業で毎回実施される「漢字テスト」や「必修テスト(マンスリーテスト・公開組分けテスト)」などの結果が気になる方もいらっしゃるでしょう。「クラスには満点が取れている子もいるみたいなのに、うちの子は○点で。なんとかしなきゃ!」というお気持ちになられることもあるかもしれません。ただ、それらのテストは「ゴール」ではないのです。けっして「あせる」必要はありませんし、保護者の皆様が不安や焦りを感じてしまうと、お子様に「精神的な負荷」がかかってしまうこともあります。
「ゴール」となる入試問題を見ておくことは、すべての科目において学習の方向性を定めるためには大切なことです。保護者の皆様もよろしければ、入試問題をご覧になってください。今年もいろいろと興味深い問題が、さまざまな学校で出題されています。
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