『オリンピックと入試体験記』
2018.02.21
韓国で行われている冬期オリンピックでの日本人選手の活躍が、毎日ニュースになっています。羽生選手も小平選手も「金メダル」がとれて本当によかった、心から大きな拍手を送りたい……テレビの前でそんな風に思っていました。「金メダル候補」として大会前から大きく報道されていましたし、我々には想像できないほどの大きなプレッシャーの中での戦いだったことでしょう。その中で実力を発揮し、多くの人の期待に応えて表彰台の一番上に上るというのは、本当に強い精神力を持っているのだと思います。体力や技術だけではなく、その精神力の強さも「実力」と呼べるものでしょう。そう考えると、オリンピックという目標を目指しているスポーツ選手たちも、中学入試へ向けてがんばっている小学生たちも、それぞれの大きな目標に向けて努力をし続けるという点においては、大きな違いはないと感じています。それぞれの目標の大きさは違いますし、当然そこに向けた努力のレベルも違うとは思いますが……。
冬期オリンピックで競技を終えた選手のインタビューを聞いていると、皆さん必ず口にするのが「家族や、いままで支えてくれた人たちへの感謝」です。オリンピックという大きな目標に向けて取り組んできて、それが終わり、結果が出て、いままでを振り返ったときにそれまでの努力や苦労の思い出とともに、支えてくれた人たちの顔が思い浮かぶのかもしれません。「自分一人ではここまでくることはできなかった……」「多くの人の顔が思い浮かんで……」、そんな言葉をたくさんの選手が口にしていました。
今年の中学入試も終わり、私の校舎では中学受験生全員に「入試体験記」を書いてもらっています。第一志望に合格した生徒だけではなく、苦しい受験をした生徒にも書いてもらうようにしています。そしてその体験記の中で、多くの生徒が「両親への感謝」を書いてくれています。「今まで教えてきてくれた塾の先生への感謝」も一応書いてくれているのですが、読んでいて一番感じるのは、やはり「両親」に対しての「ありがとう」の気持ちです。
日々の生活や努力の中では、なかなか周りに対する「感謝」の気持ちは起こらないものではないでしょうか。毎日塾でお弁当を食べていたとしても、それを作ってくれているお母さんに「ありがとう」と思いながら食べている生徒はほとんどいないはずです。お母さんが毎日お弁当を作ってくれるのは、子どもにとって当たり前のことなのかもしれません。さらに「親への感謝」を感じる前に、先に立つのは「なかなか成績が上がらない辛さ」だったり「宿題が大変だ」という思いだったり、ときには「中学入試という道を押し付けているように感じられる親への不満」であったりするかもしれません。
しかし、入試が終わって今までを振り返り、「お母さんは塾のお弁当をずっと作ってくれていたんだな」と思い返したときに、大きな「感謝」の気持ちが自然と湧いてくるのだと思うのです。
中学入試をするということは、志望する中学校への合格を手に入れることだけが大切なことではないと考えています。目標に向かって真剣に取り組むという体験の中で、将来につながるたくさんのものを手に入れることができるはずです。「周りの人たちへの感謝」という気持ちも、そのひとつではないでしょうか。大きく困難な目標に立ち向かうからこそ、自分ひとりの力ではできないことを理解し、支えてくれる周りの人々への感謝の気持ちも湧いてくるのです。
以前のオリンピックで、ある選手が「金メダルはお金で買えない」と言っていたのを耳にしました。志望校の合格も、そこへ向けて努力も、そして身につけた学力もすべて「お金では手に入れられない」ものです。そんな大きな目標に向かう生徒たちをこれからも応援し続けたいと思っています。
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