『良質な本を……』
2020.03.13
新型コロナウイルスの状況に関しては、まだまだ「収束に向かう」というところまではいっていないようです。日本では「選抜高校野球」の中止が決まりましたが、海外でも感染が広がっているようで、WHOからの「パンデミック宣言」も大きく報道されています。早稲田アカデミーの対応はホームページでも、また校舎からの郵送物でもお伝えしていることと思いますので、そちらでご確認ください。授業を再開するにあたりましては、校舎でも感染防止の対策はとらせていただきますが、ご家庭でも塾に向かう際の検温やマスクの着用、帰宅時の手洗いやうがいなどを行っていただきますようにお願いいたします。
さて、前回まで3回の記事で「学校がお休みの期間のご家庭での過ごし方」についてアドバイスのような記事を書かせていただきました。テレビなどでも「家庭で過ごす小学生」を取り上げた報道なども多くなっています。その記事の中で「読書」についても書かせていただいたのですが、全国的に小中高が休校となっているイタリアのミラノの高校の校長先生が生徒に向けて「学校がお休みの期間に良質な本を」というメッセージを書かれて話題になっています。単なる「読書のすすめ」というメッセージではなく、17世紀のペスト流行の話題から、こういった感染症が発生した際のとらえ方などについてのメッセージになっていました。私がコメントするようなことではないのですが、個人的には共感できる内容でした。
「本を読む」ということに関しては、以前にも何度か書かせていただいております。今回は、その中から「この期間にご家庭でできる読書」という点について、「読解力を高めるための読書」という記事から抜粋して紹介させていただきます。
国語の読解力の基本は、もちろん文章に書かれている内容を理解することです。文章内容を理解するためには、頭の中で文章を組み立てることが必要になります。塾のテキストやテストの場合、問題を解くために読むという意識が強くなってしまうと、頭の中に文章の全体像を構築する前に、「答えを書こう」という気持ちが先に立ってしまって、この部分がおろそかになってしまうことがあります。それが高学年になって、国語が苦手になってしまう原因のひとつとなることもあるのです。
小学校低学年から中学年までは「読み聞かせ」という手法が効果的であるといわれることがあります。私も小学校3年生の国語の授業では、「文章を読み聞かせる」という手法をとることがあります。読み聞かせた文章の内容がどれくらい「頭の中につくりあげられるか」を確認するという目的のためには、「読み聞かせ」という手法は効果があります。あえて、テキストは閉じさせたまま、しっかりと聞かせることで「授業を受けるときの集中力を高める」という効果もあります。
物語の「読み聞かせ」は、細かい部分よりも「あらすじ」を理解することがメインです。特に小3・小4くらいまでであれば、細部よりも全体をとらえる思考を養う時期ですから、効果的な手法になるのです。ご家庭でも、物語を読み聞かせたあとで、登場人物やあらすじについていろいろと質問してみてください。お子様が文章内容をどれくらい理解できているかを試すことができるはずです。
次に、お子様に文章を読ませるときには「音読」と「黙読」のどちらがよいのでしょうか。「音読」にはさまざまな効果があります。文章を読むことに集中させる、声を出すことで元気になりやる気も生まれる、物語の会話文などは感情をこめて音読することで心情理解につながる……などです。また、自分の声を自分で聴くことで、単なる目で追いかける「黙読」とは異なり、より集中して脳が活性化するもいわれています。そして音読がうまくできるようになれば、文章を読むことそのものに自信が生まれ、さらに保護者の皆様が聴くことによって、思わぬ「つまずき」などに気が付くというメリットもあります。国語が苦手な生徒が「音読」をすると、助詞(て・に・を・は)を間違えることが多いのですが、それを矯正していくと、国語の成績が上がっていくことがあります。
一方で、気を付けなければならないのは「音読」をしているときに、「正しく読む」ことだけに注意が向いてしまうと、字面だけを追いかけてしまい、文章内容の理解までいたらないことがあります。音読をさせたあとに、何が書いてあったかを確認してみるとわかるはずです。同じような文章を読み聞かせたときと比較して、理解度が低くなってしまうことが往々にしてあります。文章全体をしっかりと理解するという読解力向上だけを考えた視点でとらえると、「音読」よりは「読み聞かせ」の方が効果のあるケースもあります。
最終的にはもちろん「黙読」をして、文章全体を頭の中に構築し、さらに細部にも注意が払えるような読み方が必要になってきます。黙読をしているのに、頭の中では音読をしていて、その結果最後までいっても何も頭に残っていない、そんな読み方にならないようにしてあげたいものです。そのためには、いまお子様がどのように文章に触れているのかを確かめて、その段階で一番効果的な読み方をさせていくことが大切なのです。
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