『目をよくする、耳をよくする③』
2020.07.08
「目をよくする、耳をよくする」というテーマの3回目です。過去2回では、「空間図形を見られるようにする」「授業で先生の話をきちんと聞き取る」という内容で書かせていただきました。今回は、語学学習における「聞き取り」というテーマについて。
早稲田アカデミーでスタートしている「オンライン英語教育」を通じて初めに身に付いてくるのは、「英語の聞き取り能力」だと説明させていただいております。「英語に対する耳がよくなる」という表現を使うことがあるのですが、わかりやすく言うと「英語が聞き取れるようになる」ということです。
実は、私も小学生のころに英会話教室に通っていました。その教室では日本人の女性が、いま思うと「日本語的な英語の発音」で教えていました。昭和の時代ですから、英語をカタカナに直して発音するような「英会話」です。「Hello」は「ハロー」というような……。そこでの学習が、中学校以降の英語学習につながったというイメージは、残念ながらありません。それよりも英語に近づいたのは中学生や高校生の頃に聞いていた「洋楽」かもしれません。高校生のとき、英語の授業でテキストの朗読をしました。そのときに先生から「君の発音には『南部の訛り』があるね」と言われて驚いたことを思い出しました。クラスの友人たちとその後に話をして、当時よく聞いていたビリー・ジョエルというアーティストの影響があるという結論にたどり着き、そのことを先生に話したところ、どうもその通りだったようです。
英語に対する「耳がよくなった」ところで、次のステップに進むとするならば、英語の映画やドラマを見ることをおすすめします。そのときに音声は英語で、日本語の字幕で意味を確認しながら見るとよいでしょう。英語で話されている内容と、字幕に書かれている日本語の意味がある程度つながってくるはずです。そしてそこに「あれ、こんな言い方をするんだ」という発見があるはずです。
学校の教室で出席をとるために名前を呼ばれた少年がいたとします。そのときに彼はなんと答えるでしょうか。日本語の字幕には「はい」と表示されると思いますが、英語表現では「Yes」ではなく「I’m here!」とか「Here!」とか答えているはずです。そこで「あっ、こういう言い方をするんだ」というのが英語理解のファーストステップだと思うのです。
外国語を習得するためには、単に文法や語彙の学習をするだけではなく、その言語が使われている文化の理解が必要だと考えています。「高文脈文化・低文脈文化」という考え方をご存知でしょうか。「高文脈文化・高文脈言語」とは、言葉で表現されている内容だけではなく、そこから相手が理解するであろうことを想定しているコミュニケーションと言われています。世界の言語の中では日本語がその代表格であり、一番極端な言語だそうです。一方で、欧米諸国は「低文脈文化・低文脈言語」がほとんどだそうで、伝達するべき内容はその言葉の中にすべて含まれるというコミュニケーション方法ということのようです。
具体的な事例としてよく使われるのが、電話での表現で「お母さんはいらっしゃいますか」という問いに対して、日本語ではそこに「お母さんと話をしたいので、代わってください」という意味が含まれ、相手もそれを理解できるのですが、英語では「いますか」と聞かれたら「はい、います」という答えで終わってしまうそうです。電話を代わってほしいときには、「お母さんと話がしたい」「お母さんに代わってください」と表現しなければならないということです。
この文化の違いを単に頭の中で理解するのではなく、そのときどきの表現の仕方で身に付けていくのが、「将来使える英語」を身に付けるということだと考えています。そしてそれは、これから先の世界で必ず必要になってくる「協働力」の土台となる「他者理解」「他文化理解」の基盤になるはずです。
日本人は外国語を学ぶときに「文字」から入ることが多いという話を聞いたことがあります。日本語は「表意文字」である漢字と、「表音文字」であるひらがな・カタカナの組み合わせで表現する言語です。特に漢字は意味があるので、その文字を見るとなんとなく意味がわかります。そういった点で日本人がそこを重視しているのもわかる気がします。私が中国や香港・台湾などに行ったときも、漢字を見ればなんとなく意味がわかって安心することができました。発音はまったくできませんし、聞き取ることもできないのですが……。一方で欧米諸国の人は、外国語を学ぶときに「音」から入ることが多いそうです。日本人も乳幼児期は「音」から言葉を覚えるのですが、それと同じようなイメージでしょうか。
英語を「音」から学ぶ、そのために「英語を聞き取れる耳を鍛える」というのが、ここから先の英語学習のポイントになるように考えています。
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