『みんなの好きな旅人算!』
2020.07.17
一学期の後半、早稲田アカデミーで「対面授業」が再開したタイミングから、神奈川県内のある校舎の小5SAクラスの算数を担当していました。「公開組分けテスト」でAコースになっている小学校5年生のクラスです。成績上位者から「S・C・B・A」という順番にコース編成されますので、一番ベーシックなクラスということになります。
早稲田アカデミーで学習しているカリキュラム(四谷大塚の『予習シリーズ』カリキュラム)では、小5の一学期の最後に「速さ」「旅人算」という単元を扱います。中学入試における「速さ」は、頻出単元であり、さらに出題パターンの幅が広いことから「難しい」単元と言われています。その中でも「旅人算」は2人以上が登場してきて、「出会ったり(すれ違ったり)」「追い越したり」、さらには「ダイヤグラム」も登場してくるので、特に「難しく」感じる生徒が多い単元です。この単元をそのクラスの生徒に教えるにあたり、私が一番考えたのは「旅人算」を嫌いにさせない・好きにさせる、ということです。
授業や家庭学習課題にはいくつか工夫を加えたのですが、教え方そのものは極めて「標準的」で正攻法なやり方です。ただ、言葉として選んだのは「難しい」「大変」というものではなく、「簡単だよ」「教えたことを思い出せばできるよ」というようなものです。
「さっきの問題よりもちょっと難しいけれどチャレンジしてごらん」という言葉は、「勉強が得意」だと自分で思っている生徒にとっては効果的です。「よし、やってやろう!」という気持ちで真剣に考え始めます。一方で、「勉強が得意ではない」と思っている生徒、言い換えれば「勉強に対する自己肯定感」がまだ自身の中にできあがっていない生徒にとっては、「難しい」という言葉は、問題に取り組むにあたって、「ハードル」のひとつになってしまいます。「難しいのか、じゃあボクにはちょっとムリかも……」と思ってしまえば、そこで頭の回転が止まってしまいます。
もうひとつ行ったのは、問題の解説をするときには常に「速さの基本公式の確認」から進めました。どの科目のどの単元でもそうなのですが、「基礎土台」をしっかりと理解していないために、応用的な考え方ができなくなってしまうことがあります。もしくは応用的な考え方ができていたとしても、基礎があいまいなために、正解に行きつかずにマルがもらえないという結果になってしまうこともあります。そうなると「苦手意識」が強くなってしまうのです。
結果として、私の思惑通り、5SAクラスの生徒たちは「旅人算が好き」と言ってくれるようになりました。前回の授業では「総合回」として、そこまでの4週間分の学習単元のまとめを行ったのですが、「さぁ、次の問題はみんなの大好きな旅人算だ!」と声をかけると「わー!」と歓声があがるようになりました。
今週末には「公開組分けテスト」が行われます。きっとみんな「旅人算」の問題には真剣に取り組んでくれると思います。その結果として、正解になるか、残念ながら不正解になってしまうかはまだわかりません。ただ、テストの問題に「真剣に取り組む」ことで、きっと階段を一歩上ることになるのは間違いないはずです。さらに夏期講習会で、「速さ」「旅人算」をしっかりと復習して、将来の入試問題では「得点源」の一つになってくれると考えています。
お子様の家庭学習でも、ちょっとした「声のかけ方」で問題に取り組む姿勢が変わってくることもあるはずです。参考にしていただければと思います。
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