四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『他者を理解する』

2020.09.30

季節が急に進んだように感じます。ついこの間まで半袖のワイシャツを着ていたのですが、気が付いたら、朝晩は長袖でも肌寒く、上着が必要な気温になっています。また暑さが戻るというニュースもあるようですが、季節の変わり目、皆様も体調にはお気を付けください。


いよいよ来年から始まる「大学入学共通テスト」の願書受付が始まったというニュースをやっていました。新型コロナウイルスの影響下での入試となることから、例年の「第一日程」だけではなく「第二日程」も選択できるなどいくつかの変更点が設けられているようです。


「大学入学共通テスト」に代表される「高大接続改革」ですが、実際にどのような力が問われるのかご存じでしょうか。文部科学省のホームページには、高大接続改革で問われる力として、以下のような要素が挙げられています。以前にも書かせていただいたのですが、再度ご紹介致します。


①知識・技能
②思考力・判断力・表現力
③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度


「協働力」という言葉は、これからの教育のキーワードになっているようです。その背景にあることとしてよくお話しするのは、「ひとりの天才が成果を出す社会から、能力の高い個が集まってチームとして成果を出す社会」になってきているという点です。ここで「他者と協力していく力」というのが「協働力」となるわけですが、その力についても「高い・低い」という評価が必要になってきているのです。実際に東京大学の推薦入試課題には「このグループディスカッションはみなさんの論理的思考力、発想力、コミュニケーション能力、チームで作業する能力などを審査するためのものであり……」と表記されています。


「協働力」を高めていくための取り組みとして、いくつもの中学校・高校でさまざまなものが取り入れられ、実施され始めているようです。そういった観点から学校選びを進めるのも、これからは必要なことになってくるのではないでしょうか。


さて、中学校・高校で「協働力」を身に付けるためには、小学生の間に「協働力」につながる「コミュニケーション能力(表現力)」と、その根底にある「他者を理解する」という点を伸ばしていくことが必要だと私は考えています。「協働」するためには、「ひとりよがり」ではなく、他者の気持ちや考えを理解するところがスタートラインのはずです。そこが「協働」の土台となるのではないでしょうか。


他人の気持ちを理解するのは、とても難しいことだと思います。ただ、人間は一人では生きていけないものですから、常に他者とのコミュニケーションを意識しなければなりません。


国語では、心情をとらえる問題がよく出題されます。登場人物が置かれている背景を理解し、気持ちが動く原因となる出来事を読み取り、そしてその結果生じた人物の行動や表情・会話から気持ちを推測する、といった手順で考える問題です。初めのうち(低学年のうち)は、おもてに出てきた「行動・表情・会話」からだけ気持ちを読み取ろうと表面的に考えてしまいがちです。「泣いている→悲しい」「笑っている→楽しい」といった感じでしょうか。その次に、結果として同じ行動でも、その原因となる事実によってさまざまな心情が生まれることがわかってきます。そして、人物が置かれている状況(背景)まで考えて心情をつかむことができるようになれば、中学入試の解法としてはOKです。


「夕日を見て泣いている小学生の女の子」の気持ちを考えるときに、「夕日を見て悲しくなった」ではおかしいでしょう。原因は学校であったことかもしれませんし、家庭かもしれません。泣いているのだからつらいことがあったのだとはわかります。ただ、つらいことがあった瞬間に泣くのではなく、一人で夕日を見ているときにこぼれてきた涙であることをとらえると、性格などを含めた背景を考える必要があるというのはご理解いただけると思います。


さて、国語の問題で出題される「気持ちの理解・読み取り」はある程度一般的なものです。ところが、実際の社会や生活の中では、それぞれの「背景」はさまざまです。単に「置かれている状況」だけではなく、その人間の「考え方」や「価値観」を理解しなければ、本当の気持ちまではわからないはずです。自分の価値観の中だけで理解しようとすると、相手の気持ちを本当の意味で理解することはできないでしょう。


お子様への接し方を考えるとき、そのスタートラインがここにもあると私は考えています。精神的な成長過程にあるお子様にとっては大人の価値観が当てはまらない場合が多くあります。お子様の、子どもなりの価値観を理解した上で、気持ちを考えて接していただくことで、お子様のやる気も高まっていくはずです。

同じテーマの最新記事

2020.09.30 『他者を理解する』
2020.09.25 『広い視野を持つ、全体を俯瞰する』
2020.09.18 『経験したことがない問題』
2020.09.16 『keep-problem-try』
2020.09.11 『読む力を高めるために ~書くことの重要性~』
資料請求はこちら
早稲田アカデミー