『理文選択 ~文系と理系②~』
2019.07.17
本日、銀座ブロッサムホール(新富町)にて、今年度第2回目となる「クローバーセミナー」を実施させていただきました。毎年、7月に実施させていただいているこのセミナーでは「夏の過ごし方」をテーマにお話ししています。夏休みはお子様が大きく成長する時期です。中学受験へ向けた学習という視点だけに留まらず、お子様が大きく伸びるために、より充実した夏にしていただくために、いろいろとお話しさせていただきました。「クローバーセミナー」を実施した際には、その内容について触れさせていただくのが通例なのですが、本日の記事では、前回予告させていただきました「文系と理系」という内容についての続きを書かせていただきます。
親が得意だった科目を子どもが苦手とするひとつの要因として、前回の記事では「本来の能力がそのまま表れるのではなく、どこまで開発されているかによって、得意・不得意は決まる」という点を挙げさせていただきました。実はこの点よりも、大きな理由があると私は考えています。それは、そもそも中学入試の科目学習においては、厳密な意味での「文系・理系」という考え方はできないと思っているからです。
「算数」は数字を使うという点で、理系科目ととらえられがちですが、私はそうは思っていません。「数学」になると、数式を使って論理的に考えていくという部分が多くなりますが、「算数」では、さまざまな思考方法や処理方法が必要です。正解に至る道筋を論理的に考えることが必要な問題もありますが、ときには飛躍した思考やヒラメキが必要な場合もあるわけです。さらには、設問文を読んできちんと理解し、整理するというような点では国語的(文系的)感性も必要になってくるのです。そういう視点で考えると、「文系・理系」と分けて考えることは、適切でないように思うのです。
さらに考えていくと、お子様の将来に必要となる力は「文系・理系」に偏ったものではないように思います。もちろんどちらを専門に進めていくかは、進学した大学の学部や職業によって違いは出てくるでしょうが、理系の職業だから、文系的素養はまったく必要がない、もしくはその逆ということはないと思うのです。特に、現代そしてこれからの未来においては、文系・理系がよりクロスオーバーするような学問・職業が増えてくるはずです。たとえば、大学の経済学部といえば文系の代表的な学部でしたが、いまでは文理融合学部といわれることもあるように、現在の経済学において数学的要素は必須になっているのです。そう考えると、高校における「文系・理系」のコース分けについては、いろいろと考えることも必要になってくると思うのです。
高校(特に進学校)における文理コース分けは、大学入試という点だけを考えると効果的なもののように思います。しかし、その先の大学で学ぶことを考えると疑問点も残るように思うのです。ある難関進学校の校長先生とお話しした際に、「うちの学校では文理コース分けをしていません。文系志望の生徒にとっても理系的な素養が必要ですし、理系志望の生徒にとっても文系的な考え方が必要だと思うのです」ということをおっしゃっていたのを思い出します。
高校に進学した生徒から、「文系・理系のコース分けがあるのですが、どちらにしたらよいですか」という相談をもらうことがあります。そのときにいろいろと聞いてみると、「自分は数学が苦手なので、文系に……」という話が出てくることがあります。その際、私は必ず「科目の得意、不得意で考えることはやめた方がよい」とアドバイスするようにしています。「もっと先を考えて……」ということも話をしているのですが、高校生になっていても、なかなかそこまでの視点を持つのは難しい場合もあるようです。
いよいよ今週の日曜日から、早稲田アカデミーでは夏期講習会がスタートいたします。お子様にとって充実した学習が進められるように、さらに大きく飛躍していただけるように、各校舎では準備を進めておりますので、早稲田アカデミーとがんばるお子様に、ぜひご期待ください。
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