四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『「数の世界」を広げる』

2022.06.22

早稲田アカデミーの小3算数カリキュラムでは、6月に「小数」を初めて扱うことになります。よく言われる「導入」という授業です。小3から小4の算数の授業では、新しく学習する単元の「導入」授業がいくつかあります。この導入の授業を行うときには、いろいろと気をつかうことがあります。


保護者会やセミナーなどでもお話ししているのですが、「はじめの一歩」をどう踏み出すかはとても大切です。単に「知識」として教えるだけであれば、それほど難しくはないのですが、その単元の「本質的」な部分をきちんと理解してもらうためには、教え方を考えたり、工夫したりということが必要なのです。最初の導入段階で本質的な理解ができれば、そこから世界は大きく広がっていきます。一方で、単純な知識としての理解だけだと、そこにとどまってしまい、その先に進むためにはまた新たに「覚える」ことが必要になってしまうのです。


たとえば、「わり算」について学ぶときに、最初の段階で、その式の本質的な意味がきちんと理解できれば、文章題でも使いこなすことができるようになります。しかし、そこの理解が不十分だと発展的な問題に進むことができません。「80÷5=16」というわり算には「80を5つに分けるとひとつは16」という意味だけではなく、「80の中に『5』は16ある」という意味があることを理解しているかどうかで「わり算」が使える問題の範囲が大きく変わってくることはご理解いただけるでしょう。


「ABCDEABCDEABCDE……と規則的に文字が並んでいます。80番目までにAはいくつあるでしょう」という周期算の問題があります。「ABCDEという5つの文字の『まとまり』が、80個目までにいくつあるかを考えてみよう」と話したときに、わり算の「後者」の意味を理解していれば、すぐに「80÷5」という式を思いつくことができるでしょう。一方でそこが理解できていないと、「周期算はわり算を使う」という知識を「覚える」ことになってしまうのです。


冒頭の小数の話に戻します。それまでは「整数」だけの世界で考えてきた小3生に、いきなり「小数」という新しい概念を教えることになります。実はそれは単に「小数点」とか「小数第一位」とかの知識を教えるだけではなく、お子様にとっての「数の世界」が一気に広がるということなのです。


それまでは「0の次は1」というのが、お子様にとっての数の世界でした。ところが、小数を理解すると「0と1の間」にたくさんの数があるというのを学ぶことになるのです。お子様にとって、いままでは「0の次は1」と思っていたところに、その間には数えきれないくらいたくさんの数が存在しているということは、大きなカルチャーショックになるのではないでしょうか。その「カルチャーショック」をしっかりと味わってもらいたいのです。そのある種の「不思議さ」をしっかりと心に刻みながら、成長していってほしいと思っています。


小4では「小数」「分数」でこんな話をすることがあります。
「1÷7=0.14285714285714……」
「6÷7=0.85714285714285……」
永遠に終わりのない「循環小数」となります。


一方で「(1÷7)+(6÷7)=7÷7=1」となります。さて、「1÷7」「6÷7」の答えになっている循環小数の各位を足してみてください。「0.999999999999……」
もっと簡単な計算では……
「1÷3=0.333333……」
「2÷3=0.666666……」
やはり各位を足すと、「0.999999999999……」


数学の世界では「1≒0.9999999999……」ということになっているのですが、単にその知識を知っているということではなく、そこに「ちょっとした不思議」を感じるようになってほしいと思っています。

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