『ほめて伸ばす』
2021.12.10
よく「ほめて伸ばす」という言葉を聞きます。小学生を伸ばすためには、私も「ほめる」ことは重要だと思います。以前担当していた小学校4年生のクラスに漢字が苦手な生徒がいました。ある日行った漢字テストでは、100点満点中50点未満の点数でした。次の週にがんばって65点まで伸ばしてきたので、ほめてあげたところ、翌週には80点になり、そこからは90点以上の得点が続くようになりました。
もちろん、65点は合格点ではありません。クラスの他の生徒に対しては、65点では決してほめませんし、場合によっては厳しく指導する点数です。しかし、そのお子様の場合は、その前の週の点数が悪すぎたので、そこからの伸びをほめてあげたのです。そうしたところ、本当に嬉しそうな顔をしていました。きっと、その気持ちが『やる気』につながったのだと思います。
皆様はどんなときにお子様をほめていらっしゃいますか。 実は、どんなときでもほめればよい、とは思っていません。ほめることがよくない結果をもたらすこともあるのです。よい点数が取れたときにほめる、ということを繰り返すと、点数さえ取れていればそれでよいという考え方になってしまう可能性があります。場合によっては、テストでズルをするようになることもあるかもしれません。宿題が全部マルになっていることだけをほめてしまうと、解答・解説を見て解答欄を埋めることだけを意識するようになってしまいます。つまりテストの得点や宿題の完成度などの、『結果』だけをほめると、そのような弊害が生まれてしまう危険性もあるのです。
では、どんなときに、どのようにほめればよいのでしょうか。答えは簡単です。『結果』だけではなく、そこに至る『過程』をほめてあげるのです。テストでよい点数がとれたときに、『いい点だったね、よかったね!』ではなく、『毎日がんばって宿題をやったからいい点になったね』というように。万が一、がんばったのに結果が出なかったとしても、その『がんばり』はぜひほめてあげていただきたいのです。
言い換えると、「お子様がほめてほしい」と思っているときを見つけて、ほめてあげることが重要なのです。あまりがんばっていないときには、お子様は「叱られるのではないか」と心の中では思っているはずです。そんなときに受けたテストがたまたまよい点数だったとして、その結果だけをほめると、お子様は「ああ、こんなものでいいんだ」と思ってしまいます。努力をしなくても結果だけを出せばよいと考えてしまう危険性が出てくるわけです。一方で、がんばって学習したときは「ほめてほしい」と心の中では思っているはずです。しかし結果で叱られてしまうと、「あんなにがんばったのに認めてもらえなかった」と感じ、「勉強は苦手だ。何をやってもうまくいかない」と悩みはじめてしまうこともあるでしょう。
初めに書いた小4生の得点が、50点未満からが65点になったときには、明らかにそこに努力のあとが認められました。一つひとつの漢字のトメ・ハネに気をつかい、とても丁寧に字を書くようになっていたのです。本当にがんばったことがわかる答案でした。苦手な漢字をそこまでがんばったので、私は心の底からほめてあげたのです。
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