四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『天高く馬肥ゆる秋』

2024.09.27

前回の記事でも触れたのですが、今週に入ってから急に「秋らしく」なってきました。とは言っても、まだまだ最高気温が25度を超える日もありますので、「衣替え」には早いようにも思うのですが……。考えてみれば、25度を超えた日は「夏日」といわれていますので、そう考えると、やはり日本の「夏」は長くなってきているのでしょう。今回は「秋」について。


小学校4年生の国語のテキストで、「天高く馬肥ゆる秋」という表現に触れたことがあります。秋という季節は、暑くもなく寒くもなく素晴らしい季節だという言い回しであるということは、保護者の皆様であればご存じでしょう。聞いたことがある生徒もいたようですが、ちゃんとした意味までは理解できていないようでした。
「馬肥ゆる秋」については、秋は収穫の季節でもあり、「食欲の秋」という言葉からもわかるように食べ物が美味しく感じられる時期だという点については、すぐに理解してくれました。一方で「天高く」という部分については、なかなか説明が難しく感じました。


「秋の空が高いっていわれるのは知っている?」と質問してみたのですが、残念ながら、ちょっと不思議そうな顔をされてしまいました。
 
「空はいつでも高いじゃん……」
「夏とあんまり変らないよ……」


なんていう感じの答えも返ってきたのですが、「そんなことないよ、ちゃんと晴れた日に空を見てごらん」という話をしました。理科の話になるのですが、秋に空が高く感じられるのにはいくつかの理由があるそうです。ひとつには空気の中の水蒸気が少なくなり、「空気が澄んでいる」ため、空の青さ(宇宙の色)が濃く見えるためだそうです。もうひとつは夏と比べると、上昇気流が弱くなるため、入道雲のように地面から近い雲ではなく、空の高いところの雲が多くなるからとのことでした。理科の単元でいうと地学的な内容となり、早稲田アカデミーのカリキュラムでは小学校5年生で詳しく学習する内容になります。


「空が高い」のような国語的な表現の中には、自分自身が実際に感じていなければなかなかわからないことが多くあります。その表現を目にしたり、耳にしたりというときに「たしかにそうだな」と思えることが必要なわけです。そのためには普段からそういう感性を磨くことが大切になってきます。机の上でテキストとノートを広げて学習するだけではなく、毎日の生活そのものが「学び」となるのです。特に日本人の感性としては「四季に対する感覚」が大切なものになってきます。


「空が高い」という話から、続けて「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」という正岡子規の有名な俳句の話をしてみました。小4の学校教科書の中にも載っているものがあるようで、この句自体はほとんどの生徒が知っていました。しかし、この句がどういう意味を持っているのか、なぜ有名な俳句なのか、そういったところまで理解できている生徒はいませんでした。そこで、この句も秋の澄んだ空気を感じさせる句であるという話をしていきました。赤い柿の実と青く澄んだ空の対比、鐘の音の澄んだ余韻、そこから感じられる秋の空気感……。さわやかな秋の一日をイメージできるように授業を展開していきました。


「柿くへば……」の俳句の「柿」は秋の季語として使われています。この季語からもわかるように、日本人の中には「四季」が大きな存在となっているのはご存知の通りです。季語だけではなく、手紙文の「時候の挨拶」などにも季節を表す言葉が使われますし、毎日の挨拶でも気温や天候に関する言葉を交わすのが、日本では一般的です。「今日も暑いですね」「涼しくなりましたね」「雪が降りそうですね」などといった日常生活の中での挨拶は、四季がある日本だからこそだという話を読んだことがあります。確かに東南アジアなどの国では、一年を通して暑い国がありますが、そういった国では「毎日暑いですね」という挨拶は交わされることがないのでしょう。


日本人の季節感には、単に「春夏秋冬」という四季だけではなく、「早春」「初夏」「晩秋」といったような四季をさらに細かく分けるような表現もあります。そしてその言葉にもそれぞれのイメージが含まれています。たとえば「晩夏」という言葉からは、夏の終わりのなんとなくの寂しさが含まれているように感じています。


季節の変わり目、テレビでも「今年の秋は短い」というような、長期予報が話題になっています。ご家庭でも季節や四季のお話をお子様としてみるのはいかがでしょうか。

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