四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『算数に必要な読解力』

2023.11.10

11月3日に「全国統一小学生テスト」が実施されました。算数では、どの学年でも後半の文章題でかなりの「読解力」が求められる問題になっていました。特に各学年の最後の問題は、ルールや条件がしっかり読み取れているかが大きなポイントになったようです。今回は「問題を読み取る力」について書かせていただきます。


「昼と夜の長さが同じになる秋分の日ですが、今年は9月23日でした。三カ月後の12月22日には冬至となり、昼の長さが夜よりも4時間短くなります。冬至の日の昼の長さは何時間でしょう」という算数の問題を考えてみます。早稲田アカデミーのカリキュラムでは小学3年生で出てくる問題です。


まずは余談ですが、理科の観点から考えると、上記の問題にはおかしなところがあります。春分の日、秋分の日は一般的には「昼と夜の長さが同じ日」とされていますが、厳密にいえばこれは正しくないそうです。国立天文台によると、昼と夜の境目を「日の出」や「日の入」とする場合、「日の出」も「日の入」も「太陽の上辺が地平線と一致する瞬間」と定義されていることから、昼の方が長くなるそうです。例をあげると、2020年の春分の日の東京では、昼の長さが12時間8分、夜の長さが11時間52分でした。ただし、今回の問題は、理科ではなく算数の問題となりますので、文中に与えられている条件が正しいと仮定をして、考えるようにしてください。


さて、では問題に戻りましょう。気付かれた方も多いと思いますが、この問題は単純な和差算の内容です。答えを出すための式は……
(24-4)÷2=10  答10時間
となります。


「AくんとBくんが合計で24個のアメを持っています。Aくんの方が4個多く持っているとすると、Bくんは何個持っているでしょう」という問題と、考え方はまったく同じです。しかし、アメの問題なら解けるのに、冬至の問題はわからなかった、という生徒が多くいます。それは、文章題を読んだときに、書かれている条件をしっかりと理解し、不必要な情報は削り、必要な情報を補いながら問題の本質と解法に行きつく、という経験が不足しているためです。


算数の授業では新しい単元を学習するときに、解法(解き方)をまず初めに教えます。「和差算」であれば「線分図」を書いて解く、といった方法になります。そこから、いろいろなかたちで出される文章題に挑戦していくことになるわけです。はじめはすぐに解法にたどり着く問題から解かせるようにしていくのですが、そこからだんだんと複雑な条件の問題になっていきます。


冬至の問題を少し詳しく分析してみましょう。和差算の解法は理解しているのに解けなかった生徒の「頭の中」を考えてみたいと思います。設問文には、日付が書いてあったり「三カ月後」という条件が書いてあったりしますが、これらは全て不要な情報です。これらの不要な情報を削ってシンプルにすると、「昼の長さが夜の長さよりも4時間短い日の、昼の時間は何時間でしょう」という問題になるわけです。実はここまできても、まだ正解にたどりつけないケースがあります。この点については、アメの問題と比較をしていただくとわかります。アメの問題では「24個」という合計数(和)が書かれていますし、「4個」という差もありますので、すぐに「和差算」だと気が付くはずです。一方で冬至の問題では「一日は24時間」という前提が書かれていませんから、そこを頭の中で補うことが必要なわけです。大人からすれば至極当たり前のことでも、小学生にとっては、気が付かないポイントでもあります。


よく、「算数の文章題を解くためにも読解力が必要」と言われます。読解力といっても、国語で学習する「読解力」とはまた違うものなのです。「何を問われているか」をしっかりと読み取り、文章中に書かれている条件を整理分析し、解法に至る道筋(「解答に至る」ではありません)をきちんと考える……それが「算数に必要な読解力」だとご理解ください。

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