『ベストパフォーマンス』
2024.05.17
「ベストパフォーマンス」という言葉を耳にすることがあります。正確な英語としての使用方法ではなく、和製英語的な使われ方のように感じるのですが、「ベストパフォーマンスを発揮する」という形などでよく使われているようです。私も早稲田アカデミーの職員に対して、「毎回の授業で『ベストパフォーマンス』が出せるように準備して臨みなさい」というような研修を行うことがあります。
小学生のお子様が、学習に対して「ベストパフォーマンス」を発揮するのは、どんなタイミングでしょう。もちろんすべての学習機会において、最高の集中力や気合いで臨むにこしたことはないのですが、それはなかなか難しいでしょう。早稲田アカデミーの授業では、「私語のない緊張感のある授業」を実践し(とは言ってもシーンと静まり返った状態というのではなく、集中して生徒全員が頭を回転させられる状態をつくり)、講師の講義や問題演習に集中して取り組ませています。一方で、家庭学習において同じレベルでの「集中」を望むのは小学生のお子様にとっては難しいことでしょう。しかし、小学生が授業以上に集中力を発揮する場面があります。それはテストの問題に向かっているときです。
私は小学1年生から6年生までスイミングクラブに通っていました。当時は今ほどスイミングクラブが多くはなかったこともあり、私でもかなり上位の成績を残すことができました。運動神経以前に小学生としては身体が大きかったことからも、同年代の生徒と比較してよい成績で、九州で行われた全国大会に出場させていただいたこともあります。
毎週、月曜日から金曜日までの夕方に練習をし、毎回の練習でタイムもはかっていました。しかし、自己最高記録を更新するのは、必ず日曜日に行われる「記録会」だったのを覚えています。練習でも決して手を抜いていたつもりはないのですが、ベストタイムを出すことはできませんでした。そして、一度「記録会」で記録を塗り替えると、不思議なもので、次の練習からは「それまでのベスト」は軽々とこえられるようになるのです。「ベストパフォーマンス」を発揮することで、それまでできなかったことができるようになる。その時点でそこまでの「壁」を乗りこえる、そんなイメージでしょうか。
お子様の学習に置き換えてみます。授業で習った内容は「わかった」つもりでお帰りになるはずです。家庭学習で宿題を進めるときに、易しい問題はできても、難しい問題になると「わかってはいるけれど自分では解ききれない」という状態になることがあるはずです。その壁を乗りこえるのは、テストで真剣に問題に取り組んでいるときなのです。「テストになったからといって、今までできなかった問題ができるようになるはずはない」というのも、一方では正しいと思います。特にそれが高校生以上の場合はそうでしょう。しかし、小学生の場合、精神的な成長の途上にあります。気持ちの面においても、ムラもあれば、甘え(依存心)も残っています。その気持ちも含めてベストな状態でテストに臨むことができれば、それまでできなかった問題もできる瞬間があるはずです。その瞬間がお子様を一歩成長させる、そんな風にお考えください。
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