『小学校中学年(小3・小4)の学習指針』
2025.01.24
千葉県の中学入試が行われ、いよいよ2月1日の東京都・神奈川県入試がせまってきています。校舎の自習室でも多くの受験生が集中して学んでいます。夏期集中特訓や正月特訓で使ったハチマキをしめている生徒も目立ちますし、どの生徒のカバンにも「合格祈願」のお守りがついています。お守りがたくさんついている生徒に聞いてみたら、「これはおじいちゃん、おばあちゃんが送ってきてくれたもので、これはお父さんが出張に行ったときに買ってきてくれて、これは自分で買って……」そんな話をしてくれました。ご家族の応援も受験生たちの力になっているようです。合格してほしいという気持ちはもちろんなのですが、それ以上に「いままで培ってきた力をすべて発揮してほしい」と思っています。志望校の入試が終わったあと、「やりきった!」という思いで校門を出てきてほしい、そんなことを毎年考えます。
さて、受験生が入試を迎えると、早稲田アカデミーでは新年度・新学年をむかえることとなります。私が今年担当している小3クラスの授業も、残すところあと1回となりました。1月はすべての学年で「現学年のまとめ」的な授業が行われています。そのようなタイミングですので、今回はこの一年間の学習内容を振り返っていただくという意味を込めて、小3・小4という「小学校中学年」における学習の重要性について書かせていただきます。
早稲田アカデミーの授業で使用しているテキストは、四谷大塚の「予習シリーズ」という教材になります。この「予習シリーズ」は「小4(上巻・下巻)」「小5(上巻・下巻)」「小6(上巻・下巻)」の全6冊から構成されており、学年ごとの区切りはされていますが、原則として「連続性」をもったカリキュラムになっています。例えば、算数の「割合(1)」や「速さ(1)」は「小4(下巻)」に登場し、「割合(2)」「速さ(2)」は「小5(上巻)」に登場するというような形になっているわけです。
この全6冊のテキストに、「中学入試に出題されるほとんどが詰まっている」と言っても過言ではありません。言い方をかえれば、「この6冊の内容がすべて理解でき、自分の力でアウトプットできれば、中学入試において(ほとんどの学校で)合格点をとることができる」ということにもなります。
このように申し上げると、「小4からのスタートで中学入試は間に合う」とお考えになる方も多くいらっしゃるでしょう。ただ、ちょっとお待ちいただきたいのです。この6冊のテキストに書かれている内容は、学校の教科書と比較をすると非常に密度が高く、レベルも高い内容です。普通の小学生であれば、読んだだけで理解するのは至難の業ですし、さらにはその内容を自分で使いこなせるようになるのは、非常にハードルの高いことだとご理解ください。
「小4からのレベルの高い内容」を身につけるために大切なのが、小3の学習となります。私は保護者セミナーなどでは、小3学習のイメージを「頭の中のタンスに引き出しをつくる」というように表現することがあります。小学生段階で「頭脳という器」はとても大きいものだと思っています。しかし、その頭脳もトレーニングをしなければ、「input」も「output」もなかなかスムーズにはできません。そのトレーニングのイメージが「引き出しをつくる」なのです。
小3から小4では、新しい学習内容がたくさん出てきます。算数では小3で「わり算」「小数」「分数」「角度」、小4では「倍数・約数」「割合」「速さ」「面積」などを初めて扱うことになります。こういったひとつひとつの学習内容について、しっかりとした「考え方の引き出し」をつくっていくことが、その先につなげるためにはとても大切なことになるのだとお考えください。「引き出し」さえできていれば、そこに知識や考え方を入れていくのは後からでもかまわないのです。きちんと「引き出し」ができていれば、そこから取り出す(output)ことも比較的簡単になるはずです。
小3・小4学習について考えるときに思い出すことがあります。 2019年にノーベル化学賞を受賞された吉野彰先生のインタビューを、当時テレビで見ていました。そのときに印象に残ったのが「化学の道に進みたいと思ったのは、小学校3年生か4年生のときに、学校の先生から勧められた『ロウソクの科学』という本を読んだときだった」というお話でした。話題にあがった「ロウソクの科学」については、書店の売り上げランキングの上位にきたというニュースも見た覚えがあります。
小学生のときにどのような刺激を与えるのか、どのようなことを考えるきっかけをつくるのか、それはその先の将来や人生にとって、本当に大切なことなのだとあらためて考えさせられた瞬間でした。日々、小学生に教えている我々講師にとっては、その点をしっかりと考えて、彼らの将来のために接していくことが必要なのだと強く思っています。
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