四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『2月1日まで ~扉~』

2024.01.26

今年も小6受験生クラスを担当しています。今年の受験生たちは、私が武蔵小杉校に転任してきた2020年、小学3年生になった生徒たちです。そこから4年間、一緒にがんばってきました。ふと、私にとって何度目の受験生だろうと考え、数えてみようと思ったのですがやめました。講師にとって何度目の受験生であろうと、受験生たち本人にとっては、人生でたった一度きりの受験であり、私にとって何回目であったとしても彼らにはなにも関係ないと思いなおしたからです。


今年の受験生たちは、小3からずっとマスクをして通塾をしてきた学年です。学校休校期間もあり、塾の授業はすべてオンラインとなり、行動制限のある中での学習を継続してきました。早稲田アカデミーでは他塾よりも少し早くオンライン授業を始めることができ、全員がZoomで出席する中、静かな教室でタブレットに向かって授業をしていたのを懐かしく思い出しています。Zoomの背景をいつも「ドラえもん」にしている生徒がいて、先日彼が体調不良でZoom参加だったときに、その話をしました。それ以降も継続して「早稲アカDUAL」という名称で対面とオンライン(Zoom)をお選びいただけるようなスタイルでの授業を続けてきました。冬期講習会でもインフルエンザに感染してしまった生徒が、オンラインで参加をしており、このオンライン授業を導入した効果は、きっと中学入試で結果となって出てくると思っています。


さらに、この学年から早稲田アカデミーでは、下記のようにいくつかの指導上の変更を行っています。
①小3からの理社授業を開始
②小4からの隔週カリキュラムテストを必修化
③小4からのテキスト・カリキュラムを全面改訂
いずれも最近の中学入試傾向に合わせた変更となっていますので、これらの学習効果も今年の入試結果にはプラスとなって出てくると考え、個人的には大きく期待しているところです。皆様も早稲田アカデミー生を応援していただき、結果にご期待いただければと思います。


この時期になると毎年思い出すエピソードがあります。以前このブログでも書いたことがあり、2021年に発刊した『中学受験 ~身に付くチカラ・問われるチカラ~』にも掲載した記事なのですが、今年の受験生の皆様にむけて、さらに来年以降受験を迎える皆様のために、再掲させていただくことにいたします。調べてみたところ2014年の記事でしたので、今からちょうど10年前の内容です。


もう10年以上前の話になります(と、2014年に書いておりますので、今から20年前いうことになります……)。1月31日の夜10時くらいに、校舎に受験生のお母様から電話がありました。翌日に第一志望校の入試を控え、その日も夕方まで自習室でがんばっていた女の子だったのですが……。
「先生!娘が明日受けたくないって言い出して」
お子様は電話にも出たがらない状態でしたので、なんとか校舎までお連れいただけないかとお話ししました。
それからお越しいただき、面談室で始まったのは、彼女の懺悔話でした。出された宿題が終わらずに友達に写させてもらった、計算テストで隣の子の答案を写したこともある、先生に提出した過去問は実は二回目だったので点数がよくて当たり前なんだ、……などなど。そんな自分が明日受験をしても合格できるとは思えないと、号泣しながら打ち明けてくれました。


小学生が入試へ向けた学習を進めていく上では、そんなことは誰しもが経験していることのはずです。ただ、彼女は入試前日の緊張感と不安の中で、そんなことが思い出されてきて、とても耐えきれなかったのだと思います。彼女が私とその話をしている間、お母様は何もおっしゃらずにずっと彼女の手を握っていらっしゃいました。私も言葉を尽くして励まし、ようやく笑顔に戻って校舎を後にされたのは深夜12時を過ぎていました。(早稲田アカデミーのルールでは、生徒を校舎で対応するのは最長22時までとなっていますので、このケースは入試直前期の特例対応です。ご了解ください)


翌朝、彼女の志望校の校門前で待っている間、どのような言葉をかければよいのかを考えていました。多くの受験生が通り混雑する中、一人の生徒をそんなに引きとめておけるものではありません。一言で何かを伝えなければと、いろいろな言葉が頭の中を巡っていたのを覚えています。


彼女がやってきました。昨日の涙のせいか、腫れぼったい瞼をしていました。しかし、その下の瞳はキラキラしていました。何かが吹っ切れたような。いろいろ考えていたのに、口から出たのは「目の前の問題だけに集中して」という一言だけ。彼女はうなずく代わりに、握手の手に力を込めて、ギュッと握り返してくれました。彼女が校門を入っていく後ろ姿を見ながら、肩の力が抜けていくのを感じました。
(コロナ禍以前は、入試が行われる当日、入試会場の前で塾の先生たちが応援するのが恒例となっていましたが、コロナ禍以降は自粛となっています……)


中学入試を考えるときに、「扉」をイメージすることがあります。大きな頑丈な扉にお子様が手をかけて、必死に開けようとしている。少し開いたその隙間から見えるものは、明るい未来であり、輝かしい中学校生活であり……。見た目では子どもが一人では開けられそうにない「扉」。でも、その後ろではお父様・お母様が、お子様を後押ししている。そして、我々も。大人が「扉」に直接手をかけて開けてあげれば楽なのかもしれませんが、それは決してできないこと。だから、お子様の背中を押してあげることで、少しでも力になれればと。


前日に泣いていた彼女は、合格しました。彼女の不安を取り除き、合格に導いたのは、きっとお母様の手のぬくもりだと思います。黙って握ってくれている手から、自分を応援してくれるお母様の気持ちが伝わり、自分が一人ではないと感じられた彼女は、不安な気持ちを越えることができたのでしょう。


埼玉・千葉の入試はすでに始まっていて、志望校への進学を手にした生徒も出てきています。そして、来週の2月1日(木)には首都圏では一番たくさんの学校の入試が行われます。ここからの一週間、受験生も保護者の皆様も、さまざまな想いが交錯する期間になります。


受験生保護者の皆様も、期待と不安が入り混じった日々を過ごされていると思いますが、受験生のお子様にぜひお伝えいただきたいのは、皆様がお子様を応援する気持ちです。受験会場で一人になったときに、「でも……大丈夫!」とお子様が思えるような、自分の背中をお父様・お母様が押してくれていると思えるような、そんな接し方をしてあげてください。

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