『採点者・作問者の気持ちになる』
2024.10.18
今週の水曜日(10月16日)に『クローバーセミナー』を早稲田アカデミー晴海校で実施させていただきました。今回は「子どもへの声かけ・ティーチング」と題してお話しさせていただきました。お子様に接するときの大切なポイントとして、「自己肯定感を意識して接する」というところからスタート致しました。学習に対して「自分はやればできる」と思えることが大きく伸びるために必要だと考えています。「自分はやってもダメだ」という自己否定・自己制限的な心理が働いてしまうと、やる気は出ないでしょうし、授業や家庭学習に対する集中力も欠けてしまいます。セミナーの最後では、「最終的なゴールは小6受験生になったときに、自己肯定感から生まれるセルフコーチングができるようになること」とお伝え致しました。
今回の会場となった早稲田アカデミー晴海校は、今年の夏に開校した校舎です。ご参加いただいた方の中にはかなり遠方からお越しになった方もいらしたようです。本当にありがとうございました。また、終了後のアンケートにもたくさんのご相談やご質問もお書きいただいています。きちんと目を通し、一般的なご質問にはこのブログ上でお答えしてまいります。
さて、今回は少し高学年の方むけの内容となります。 入試直前期には、中学校の入試過去問題演習を進めることになります。早稲田アカデミーが推奨しているのは9月から概ね一週間に一校一年分のペースで取り組み始め、12月以降になったらペースを上げていくという流れです。小6の夏期講習会で各科目の「総まとめ・全単元復習」に取り組みますので、それ以前に過去問演習に取り組んでも、高い学習効果は見込めません。入試過去問演習の大きな目的としては、その学校の「入試問題の傾向を把握する」という点が第一です。「傾向」といっても、「どんな問題が出るか」ということだけではありません。「問題量全体を把握し、合格点をとるための時間配分を考える」という点が非常に重要です。そういう意識を持って過去問演習に取り組むように、私は受験生に話をしています。
早稲田アカデミーでは、入試過去問を「宿題」として課しますので、担当講師がチェックするようにしています。その学校の問題に対しての適性などもそこで見ていくようにしていますので、きちんと時間を計って解くようにするといった指示も出しています。
そのチェックのときに「採点お願いします」という付箋やコメントがついた解答用紙を持ってくる生徒がいます。もちろん採点をしてコメントをつけてお返しするのですが、そのときに「まずは一回自分で採点をしてみるように」という指導をさせていただくことがあります。特に国語や算数の記述問題については、自分で解いた答案を一回客観的に見て、どこに課題があるのかを考えてみることはとても効果的です。それを私は生徒たちに「採点官の気持ちになる」「採点官の目をつくる」というように表現して教えています。
早稲田アカデミーのNNクラスの担当者は、その学校の記述の採点基準などについても指導をしています。記述の採点基準が公表されている学校は非常に少ないのですが、あるNNクラスでは、その学校の中学生の定期テストをチェックして、学校の先生がどのように採点しているのかを研究し、そこから推測して採点基準を生徒に伝えています。早稲田アカデミーのNNクラスの強さの秘訣の部分のように思います。
また、問題の作り手(作問者)の気持ちになってみるのを勧めることがあります。算数などではたまにやるのですが、先日、私のクラスで「時事問題」についての作問練習をやってみました。ご存じの通り、ノーベル平和賞を「被団協」が受賞したというニュースが入ってきましたので、それを題材にしてみました。
まずは「被団協」について考えさせたところ、「正式名称を答えさせる」という問題が出てきました。よくあるタイプの問題ですが、特に日本語の略称については問われることが多くあります。正解は「日本原水爆被害者団体協議会」です。ここで、どんな間違いをする生徒がいるかを推測させてみました。「原爆しか書かない(水の文字を入れない)」「被害者ではなく、被爆者と書く」……そんな答えが返ってきました。
次に「ノーベル平和賞」「核兵器廃絶」というところから、関連ワードを考えさせてみました。「佐藤栄作=非核三原則」、「ICAN(2017年のノーベル平和賞)」といった言葉が出てきました。
中学受験において、受験生は「解答者」という立場になるのですが、「作問者」「採点官」の意識を持って解答できるようになると、解答作成の精度が一段階高まるのだとお考えください。
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